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2023-11-14 大熊雄一郎(OKUMA Yuichiro)
中国「最弱総理」李克強氏の死で垣間見えた「却って高まる存在感」の皮肉【大熊雄一郎の眼力】
中国で急逝した李克強前首相を追悼し、その功績を再評価する動きが出ている。改革派だった李氏を懐かしむ背景には、毛沢東時代に回帰するかのように改革を後退させ、景気低迷をもたらした現政権への不満もある。李氏は現役時代、習近平国家主席の「1強」体制の確立によって権限を奪われ、「史上最弱の総理」ともやゆされた。皮肉にも死去によって存在感を高めており、習指導部は追悼文の公開や集会を制限するなどして反政府行動につながらないよう神経をとがらせている。
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2023-06-28 大熊雄一郎(OKUMA Yuichiro)
ポスト「天安門世代」の覚醒―習近平時代から脱出する若者たち―【大熊雄一郎の眼力】
1989年に中国の民主化を求めた人々らが武力弾圧された天安門事件から34年を迎えた6月4日、JR新宿駅南口(東京都新宿区)では犠牲者を追悼するイベントが開かれた。日本での集会はこれまで、事件当時の関係者が主導してきたが、今年は事件より後に生まれた中国人の若者が主催した。中国では天安門事件について語り継ぐことは許されず、その記憶は風化が進む。だが習近平指導部の強権的な統治に反発する若者たちの間で、30年余り前に政治改革を求め立ち上がった当時の学生たちへの共感が広がり始めている。
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2023-04-11 大熊雄一郎(OKUMA Yuichiro)
【大熊雄一郎の眼力】やがて魯迅は消される?高失業率背景に寺院にすがる中国都市部の若者ら
コロナ禍で深手を負った中国経済。都市部の若者の失業率は18%の高水準に達し、雇用の受け皿も乏しい。1千万人超という大卒者の間では、「卒業即失業」と自嘲気味にささやかれているほどで、競争に疲れたのか、若者らの寺院参拝が大流行だ。SNS上では文豪、魯迅の小説に登場する人物の零落ぶりにわが身を重ねるケースも目立ち、習近平指導部はこうした風潮を強く警戒。魯迅の作品は教科書から徐々に減らされている、とも。