2022-04-01 経済

国連の対ロシア非難決議案に棄権したインド 露中と西側の狭間で中立を貫く独自外交とは

© Photo Credit: Reuters / 達志影像 S. Jaishankar

増え続ける人口と減速する国内経済、中国やパキスタンとの国境紛争で疲弊した軍事など難題を抱えるインドは、たとえ友好国同士が対立したとしても、できる限り多くの国と良好な関係を維持する必要があるとニューヨーク・タイムズは解説した。

ロシアを非難する国連決議で相次いで棄権票を投じたことについて、ジャイシャンカル外相はインドの国会で、「われわれの立場は、これがわが国の問題ではないとは言わない。ただ、われわれの立場は、平和を支持するということだ」とした上で、「インドの外交政策を決めるのはインドの国益であり、われわれの考え、見解、関心に基づくものだ」と答弁した。

だが同紙は、中立の立ち位置がインドの安全保障にどういう意味があるのか疑問を投げかける。例えば、対中包囲網で協力体制を固める米国、日本、豪州というクワッド〝同盟国〟から怒りを買うリスクを負うのか。もし西側の制裁によりロシアや中国が詰め寄ってきた場合、どう対処するのか。

インドの外交に40年にわたり第一線で携わってきたジャイシャンカル氏は、モスクワや東京のインド大使館に勤務した後、北京とワシントンで大使を務めた。妻は日本人で、日本語を始め、英語、中国語、ロシア語なども解し、西側と中露を熟知。そのジャイシャンカル氏は自身の著書「The India Way: Strategies for an Uncertain World(インド式:不確かな世界の戦略)」で同国独自の外交原則を説く。それが中立性を保ちながらのバランス外交だ。

中国を訪れ、王毅外相と会談したロシアのラブロフ外相が31日、インドを訪問し、ジャイシャンカル氏らと会談。西側の経済制裁によりロシアが排除された国際銀行間通信協会(SWIFT)国際決済ネットワークに代わり、ロシア中央銀行が開発したシステムを利用するよう同国側が提案していることなどについて協議する。

米ブルームバーグは31日、対露制裁を骨抜きにしかねないこの提案をインドが検討していることに米国や豪州は批判。一方、インドはロシア製武器の最大の買い手であり、燃料が高騰する中で安価な原油を輸入したい意向だと報じた。

インドと日米豪と「クワッド」の溝の深まりが浮き彫りになっている。

 

オススメ記事

月イチ連載「カセットテープから台湾がきこえてくる」第1回:DSPS『我會不會又睡到下午了』

プーチン大統領に忠誠誓ったロシア親衛隊 ウクライナ派遣拒否や幹部逮捕の重要な意味

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい