2021-12-22 経済

TSMCの1兆円プロジェクトに新展開ー「半導体業界で 返り咲く」日本の野望と歴史からの教訓 (短期連載・下)

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注目ポイント

アメリカ・日本・中国の3か国間の競争の中で、いかに経済状況に左右されることなく競合他社に勝つか、それを握るのがサプライチェーンの強化とされ、各国とも力を入れている。台湾は、その経済構造と地理的な観点から、自由貿易を重視する日米と同じ立場にあるようだ。第一段階として貿易摩擦、第二段階がサプライチェーンの再編成であり、この先は誰が科学技術競争の中で生き残れるか、だ。

日本の「半導体復興」への野望と歴史からの教訓


 グローバルファウンドリリーダーであるTSMCによるアメリカでの工場設立は、アメリカのサプライチェーン構築において最も重要なことである。アメリカはTSMCだけでなく、その他の台湾・韓国の半導体メーカーの誘致を積極的に行っている。また、アメリカは半導体サミットを主催し、国内の半導体製造を積極的に促進するため520億ドルをかけ≪CHIPS法≫を推進すると決めた。これは「中国製造2025」に影響を受けたと見られ、貿易戦争と技術戦争に徹底的に勝つために、アメリカ政府と企業は先進科学への多額の投資を惜しまなかった。国際的な生産拠点が中国に集中している現状を変えたい狙いだ。世界中の親中派の人々が集まっても、アメリカの両党が中国を敵視することを覆すことは出来ないだろう。


 TSMCは最先端チップの生産をほぼ独占している。そのためアメリカの最新鋭兵器や、量子コンピューター、人工知能、モノのインターネット化の開発はTSMCなしでは実現できない。アメリカは国家安全保障上の需要からくる最新兵器の供給のみ行っているが、TSMCをアメリカに誘致する上で他国の戦争や自然災害からくる米国サプライチェーンへの影響リスクを減らすことは必要不可欠だった。


 「国家安全保障」を理由に何かを決めるのは新しい概念ではなく、アメリカはこれまでも政治や経済において方向性を決める際に念頭に置いてきた。この政策理論は、1980~2000年代の日米間の貿易摩擦から始まり、現在は中国が主導する「汚れた」サプライチェーンに対処する目的で用いられている。


 半導体産業における日米の対立は30年にも及び、やがてアメリカの政治的圧力、デバイス利用者市場の変化、韓国からの追い上げ等さまざまな要因が重なり、日本の半導体産業は衰退していったのだ。つまり、中国政府と親中派の人々がどんなにロビー活動を行っても、アメリカが貿易とサプライチェーンを変えると決断してしまったら、何も元に戻すことは出来ないのだ。先の日米間の貿易摩擦は国際的な分業制度を形づくったものであり、日本の半導体産業の崩壊の始まりでもあった。現在の米中貿易戦争は、冷戦時代の中で新たなサプライチェーンが形成されるきっかけであり、日本が自国の半導体産業の「返り咲き」を望むならば、このチャンスを逃してはならない。


 

隠しきれない台湾と日本の半導体提携戦略の重要性


 たとえ軍事的理由であれ経済的理由であれ、インド太平洋地域の自由と繁栄を維持することは日本にとって大事なことである。今年11月末、安倍晋三元首相が台湾の民間シンクタンクである国家政策研究所のビデオインタビューでこう答えた。中国共産党の脅威について、経済と軍事費用は毎年約7%の増加が見られると指摘。さらに習近平国家主席に対し「台湾の有事」は「日本の有事」と同等であること、ひいては「日米同盟の有事」に相当するということを再度アピールした。


 周知の事実であるように、日本で史上最長の首相であった安倍氏は、日本の国運を劇的に変え、日本をインド太平洋諸国の中で確かな地位にのしあげた人物だ。安倍氏が首相時代に決めた政策の方向性や、親米、対中そして台湾を外交路線から外さないという姿勢は、親密な政治仲間ともいえる菅義偉前首相に受け継がれ、岸田文雄現首相にも引き継がれた。過去数年間で、日本は台湾の軍事力を繰り返し高めただけでなく、CPTTPを通じて台湾が地域経済統合に参加できるように積極的に支援を行ってきた。


 日本と台湾にとって、半導体産業における提携を深めることは、広範囲にわたる経済的利益をもたらし、両国間の交流を深めることは、両国が協力をして最大の地政学的リスクである中国に対抗できることになる。日本は、台湾との2国間関係を強化しただけでなく、政治手段を通して台湾海峡の安全を日米安全保障にうまく組み込み、第一線でアメリカ軍に介入させることや軍事的脅威への抵抗を獲得させた。台湾・アメリカ・日本の半導体産業の統合が進むにつれ、日米は技術や市場情報を台湾にフィードバックしながら、自国の生産ラインを確保し互いの繁栄に繋げることが出来るのだ。


 台湾・アメリカ・日本の半導体提携により勢いづいた3国だが、その中でも中国はビジネスチャンスを決してあきらめたわけではない。2021年、中国は世界一のFDI(外国からの投資の最大の受け手)を獲得し、アフリカ・中東・東南アジア・南米の政治及び経済状況は依然として中国に左右される状況だ。複雑な競争戦略の中で、台湾・アメリカ・日本が追求する民主政治と自由経済はメリットもたくさんあるが、どんと構えていられるほどの資本が無いのもまた事実である。


 この事から、日本のリーダー達は「プラザ合意」以来の様々な塵を一掃し、日本経済と国防力の体格を改革し、中国市場への依存から脱却を目指した。そして、アメリカとの提携をより強め、インド太平洋地域経済をまとめ、日台関係を深めていった。アメリカのサプライチェーンに応じて、台湾の半導体企業を迎え入れることは、日本の新しいステージの序章にすぎない。日本の「半導体戦略」の規模と先見性から、日本の半導体産業は返り咲くための正しい道を歩んでいると確信できる。


 

原文作者:恕我無法支持
原文責任編集者:彭振宣
原文校閲者:翁世航
翻訳者:黄群儒
校閱者:TNL JP 編集部

 

 

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