2021-12-21 経済

中国女子テニス彭帥選手が取材に応じて性的暴行被害を否定するも消えない政府圧力の影

© AP /TPG Images

中国の前の副首相から性的関係を迫られたことなどをSNS上で告白し、その後消息不明だったとされる同国女子テニスのスター選手・彭帥(ほうすい)さん(35)が、初めてメディアの取材に応じ、「誰かから性的暴行を受けたと言ったり、書いたりしたことはない」と、これまでの報道内容とは一転して否定した。ところが、その不自然さが、より一層疑惑を深めている。

 

米有力紙ニューヨーク・タイムズは「中国のテニス選手、性的虐待の主張を否定するも高まる疑念」との見出しで報道。彭さんは19日、シンガポールの中国語紙・聯合早報の取材を受け、告白をめぐる西側メディアの報道内容を否定したが、「彭さんの身の安全への懸念や、中国当局から圧力を受け、情報戦の道具になっている」との疑念を払拭するものではないと同紙は論じた。

 

この問題は11月2日、中国共産党最高指導部の大物政治家で、北京冬季五輪誘致の“立役者”とされる張高麗元副首相(75)から性的関係を強要され、不倫関係になったとする告白文を彭さんが微博(ウェイボー)に投稿した。ところが、そのわずか20分後には当局の検閲により削除されたという。それと同時に彭さんとの連絡も途絶え、約3週間も安否不明になった。

 

その後、11月21日になって国際オリンピック委員会(IOC)は、バッハ会長らと北京の自宅にいるとする彭さんがテレビ電話で面会する様子を公開し、身の安全を強調するメッセージを発表。同日、今度は中国共産党系・環球時報の編集主幹が、自身のツイッターに彭さんとコーチらがレストランで会話を交わしている動画を投稿するなど、来年2月に五輪を控えた中国側が、国際社会の関心が高まるこの問題の幕引きを急いだことは明らかだ。

 

ところが、彭さんの“生の声”が一切伝えられなかったことで、かえって国際的な批判を浴び、焦った中国当局が今回の“親中”シンガポール紙の取材をお膳立てしたというのが、西側メディアや人権団体の見方だ。

 

同紙は記事を掲載するとともに、約6分間の映像も公開。その映像に映る彭さんは終始硬い表情で、「私は誰かから性的暴行を受けたと言ったり、書いたりしたことはない。この点は、はっきり強調しておきたい」と明言。現在は北京の自宅で暮らしていて、軟禁状態を否定し、「ずっと自由だ」と強調した。

 

また、同じ19日には中国共産党系・環球時報の記者も、彭さんが上海で開かれたスポーツ大会の会場で米プロバスケットボールNBAの元選手で中国の国民的英雄として知られる姚明(ようめい)氏らと談笑する動画をツイッターに投稿。自由にふるまう彭さんの様子をアピールしたものだ。

 

だが、ニューヨーク・タイムズ紙はシンガポール紙の取材について、「多くの重要な質問は投げかけられず、また答えられてもいない」と批判。ニューヨークに本部を置く国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のケネス・ロス代表は「彭さんの今回の発言は、中国政府による圧力へのさらなる懸念を深めただけ」とツイートした。彭帥騒動は今後も尾を引きそうだ。



 

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