中国の武漢で最初の新型コロナウイルス感染者が発見されてから、間もなく丸2年になる。この2年間で世界中の感染者数は2億人を超え、ワクチンの研究・開発、配布も進んでいるが、変異株も次々と現れ、まだ予断を許さない状況と言わざるを得ない。 {"name":"tnljp_a_p2_special","type":"general","size":[[640,480],[640,360],[336,280],[320,480],[300,250],[1,1]],"mapping":[{"screen":[640,0],"list":[[640,480],[640,360],[336,280],[320,480],[300,250],[1,1]]},{"screen":[336,0],"list":[[336,280],[320,480],[300,250],[1,1]]}],"targeting":{"advertising":"0","cabinet":"1317","page_key":"article","page_name":"article","category_key":["life","politics"],"category_name":["ライフ","政治・国際"],"feature_key":[],"feature_name":[],"author_key":["hashimoto"],"author_name":["橋本行平 (HASHIMOTO Kouhei)"],"tag_key":[],"tag_name":[]}} 台湾は、コロナをほぼ完璧に抑えることに成功した数少ない国の一つである。2019年12月末日に台湾の医師が武漢で何か感染症が発生していることに気づき、WHOに真偽を確かめたが、加盟国ではない台湾からの問い合わせにWHOは返答せず、その結果台湾が独自に調査と感染対策に動いたこと、つまり初動の早さが初期段階からの感染症の抑制に成功した最大の要因であろう。 その後、台湾は迅速、且つ的確に次々と対策を打ち出し、毎日決まった時間に記者会を開いて情報を公開し、また、刻一刻と変化する事態に対応するため、柔軟且つ大胆に軌道修正をしてきた。 {"name":"tnljp_a_p6","type":"general","size":[[640,480],[640,360],[336,280],[320,480],[300,250],[1,1]],"mapping":[{"screen":[640,0],"list":[[640,480],[640,360],[336,280],[320,480],[300,250],[1,1]]},{"screen":[336,0],"list":[[336,280],[300,250],[1,1]]}],"targeting":{"advertising":"0","cabinet":"1317","page_key":"article","page_name":"article","category_key":["life","politics"],"category_name":["ライフ","政治・国際"],"feature_key":[],"feature_name":[],"author_key":["hashimoto"],"author_name":["橋本行平 (HASHIMOTO Kouhei)"],"tag_key":[],"tag_name":[]}} このように世界の注目を集めた「台湾モデル」だが、早期に診断し、迅速に接触者を特定し、必要な人に対して適切な隔離を実施するという点では諸外国の対策とあまり変わらない。 日本では水際対策として入国制限の重要性が指摘されながら、人権や移動の自由、経済対策、五輪開催などの理由で対策が後手後手に回ってしまった。 それに対して台湾では、感染者が確認されると直ちに特定地域や特定の国からの入国を制限したり、14日間の隔離を義務付けたりした。2020年1月には湖北省、広東省、温州省、浙江省からの入国を制限、2月6日にはついに中国人全体の入国を禁止した。2月から3月にかけて中国以外にも、イタリア、イランを皮切りに、感染状況に応じて細かく国ごとに入国を禁止し、3月19日には全外国人の入国禁止に拡大された。 マスクを買うときに健康保険カードを持参する「マスク実名購入制度」が2020年2月6日に実施され、4月1日からは公共交通機関におけるマスク着用が義務付けられた。また一時的に外食も禁止された。9日にはキャバクラなど接待を伴う飲食業者に対して罰則と補償付きの強制力ある一斉休業命令が出された。そしてこれは、唯一休業命令された業種となった。 © 新規感染者連続0人をライトアップする台北圓山大飯店(2020年4月29日筆者撮影) ワクチンや治療薬の開発が待たれる中で、台湾の感染者数はコロナ発生から約1年半の間、累計千数百人程度(空港・海港検疫を含む 以下同じ)に抑えられていたが、2021年5月下旬に、コロナに感染した国際線パイロットから濃厚接触者に感染し、台湾での感染者が急激に増加し、6月上旬には累計でいっきに一万人を超えた。7月上旬には15000人を突破したが、その後16000人台で高止まりしている。 この感染者数急増が始まった5月中旬に、デパート、コンビニなどの店舗、映画館、図書館などの施設、飲食店、薬局、市場、雑貨店、美容院などほとんど全ての場所で、実名を登録するか、各店ごとに割り当てられたQRコードをスマートホンでスキャンしなければ入れないシステムも導入された。 ワクチンに関しては、2021年2月にワクチンの接種が始まり、最初は中国の妨害などで計画より多少遅れ気味であったが、外国からの援助や台湾企業の努力のおかげでワクチン接種率はかなり上がってきている。一回でもワクチン接種を終えていればスポーツ大会や色々なイベントなどへの参加手続きも簡素化されるため、「COVID-19疫苗接種記録卡」、いわゆるワクチンパスポートも発行・利用されている。© ワクチン接種記録カードこのように外国と比べて非常に優秀な感染対策「台湾モデル」であるが、入国制限、外食禁止、マスク着用義務化と罰金などは、ヨーロッパやアジア、アフリカ、南米、北米など、台湾と同じようにすでに行われている国も多数ある。しかし、それらの国では同時に国民からの反発も凄まじく、ベルギーやオランダでは抗議デモの暴徒化や機動隊との衝突が起きており、オーストリア、イタリア、クロアチア、デンマークでは大規模な抗議デモ、グアドループでは商店強奪、放火など、国民の自由を制限する政策に強く反発している。 その一方、日本で大規模なデモや反対運動、暴動などが起きていないのは、14日間の隔離が終われば入国できるし、外食や酒類提供の制限、営業時間の短縮、マスク着用などはすべて義務ではなく、「お願い」レベルだからである。この観点から台湾を見ると、台湾では多くの施策が命令だったり義務だったり、罰則付きだったりして強制されているにもかかわらず、大規模な抗議デモが全くないことは特記すべきと考える。 抗議運動が起きていない理由は、台湾人の性格が比較的穏やかであるのはもちろんのこと、それに加えて、政府や地方自治体が先手先手で適切な対策を講じてきたこと、そしてそれが成功し世界でもトップクラスのコロナ対策優等国となり、国民が誇りと自信を持っていることが、デモ、暴動、衝突などがなく、感染者数激増もなく、外国と比べて健康的で平穏な日々が過ごせている、根本的で最大の理由ではなかろうか。 オススメ記事:・台湾人が選ぶ「今年の漢字」・「華燈初上(歓楽街にネオンの灯る頃)」―林森北路 今昔物語 前編―・「華燈初上(歓楽街にネオンの灯る頃)」―林森北路 今昔物語 後編―・台湾はいつも元気いっぱい(第1回)・台湾はいつも元気いっぱい(第2回)