2022-04-01 経済

月イチ連載「カセットテープから台湾がきこえてくる」第1回:DSPS『我會不會又睡到下午了』

アジア音楽のカセットテープ収集をライフワークとしている音楽家・菅原慎一。彼が台湾で発掘したお気に入りのカセットテープを毎回紹介していくのがこの連載。昔のレアな音源から台湾最先端音楽まで。みんな、カセットテーププレーヤーの準備は出来た?

 

菅原:記念すべき第1回目に紹介したいのは、DSPSの『我會不會又睡到下午了』(英題『Sleep till Afternoon』)です。DSPSは台湾・台北で活動する4人組のバンド。ボーカルのエイミーさんを中心としたバンドで、彼女たちのデビュー5周年を記念して、リリースされました。

まずは、初回なので、なぜ僕がカセットテープというメディアに惹かれたのかを説明します。きっかけになったのは5年くらい前、ライブの仕事でアジアツアーに行っていたとき。ちなみにDSPSがデビューしたのもそれくらいですが、そのとき、現地の古いレコードを探しにいろんなレコ屋をまわっていたんですね。

気になる盤を手にとってレジへ行くと、プレミア化していて手が出ない。これはどうしたもんか、と天を仰いでいると、ふと棚にびっしりと並んだカセットが目に入った。よく見ると80年代、90年代当時リリースされたものばかりです。メディア形態が違うだけで、こんなに当時のものが残っているのかと驚きました。そして、これなら、日本にあるだけでは知らない音楽をたくさん知ることができるんじゃないかと思ったんです。

それからしばらく、アジア各地に赴いてはカセットを買い集めてきたわけなんですけれども、それと同時進行で、ライブの現場では、台湾のDSPSや他のバンドと出会って、日本で一緒に対バンしたり、向こうで一緒に共演したりというのをずっと繰り返していたんです。

そして今回、彼女たちから、5年前にリリースしたファーストEPを、カセットで再びリリースするという報せが届きました。これには興奮しちゃいましたね。内容は、オリジナルの3曲にくわえて、再構築した(リミックス)バージョンが収録されています。日本のEVISBEATS、香港のKimberley Road Union、シカゴに住んでいる台湾人のLayton Wuという、才能溢れるアーティスト3組がそれぞれの楽曲を担当しています。

この試みが面白いのは、オンラインでやりとりした音源を、わざわざカセットにしたということです。曲をただデジタルリリースするんじゃなくて、小さいギフトのように落とし込んでいるというのが、僕にはすごいグッとくるポイントでした。

ジャケットを手がけたのは、イラストレーターの高妍さん(日本では、村上春樹の『猫を棄てる 父親について語るとき』の装丁イラストで有名になりました)です。高妍さんとエイミーさんは、昔からの友人関係だそうです。盟友と手を取り合いながら、さらに新しい仲間を増やしてこれからもやっていくんだという、ポジティブなマインドを感じます。

DSPSの最大の魅力は、僕たち日本人が台湾といって想起させるもの(があるとすれば)とは異なる音を鳴らしているところ。たまたま台湾人だった、というくらいに僕は思っています。彼女たちの曲は、下北でもソウルでもどこでも違和感なく響く、等身大の20代の音楽そのものなんです。

いい意味で「台湾っぽさ」「アジアらしさ」がないということが、台湾の新しい魅力なのかなと僕は考えます。DSPSには、そんなことを教えてもらった気がします。美しいメロディーと軽快なビートは、地域性みたいなものを簡単に超えてくる。だから僕は惹かれ、仲良くなれたのかもしれません。

 

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