2022-03-30 経済

プーチン大統領に忠誠誓ったロシア親衛隊 ウクライナ派遣拒否や幹部逮捕の重要な意味

© Photo Credit: Reuters / 達志影像 Viktor Zolotov

〝プーチンの親衛隊〟に異変が起きている。正式名称を「ロシア国家親衛隊」という国内軍事組織があり、兵力は34万~40万人といわれる。2016年に発足したばかりのこの組織は国内の治安を担当するとされるが、実態はプーチン氏直轄の忠実なボディガード集団だ。

今月中旬、ロシア軍によるウクライナでの〝特別軍事作戦〟について、「全て思い通りに進んでいるわけではない」とした上で、「ただ、われわれは勝利に一歩ずつ向かっている。勝利はわれわれのものになるだろう」との声明を発表したのがその国家親衛隊を率いるビクトル・ゾロトフ局長(68)だ。

ゾロトフ氏は「シロビキ」と呼ばれるプーチン氏を囲うごく少数のインナーサークル(側近)の一人。元はプーチン氏の前任者だったボリス・エリツィン大統領や、プーチン氏が政界進出するきっかけを作ったサンクトペテルブルクの故アナトリー・サプチャーク市長のボディガードを務めた。同市長を通じてプーチン氏と知り合い、同時にサンクトペテルブルクで勢力を振るうロシアンマフィアの幹部らとも関係を深めたとされる。

英誌「スペクテイター」はゾロトフ氏について、「ゴロツキのような手法で悪名高い人物」と評した。現在拘束されている反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が国家親衛隊の腐敗を暴露しようとした際、「ミンチ肉なるまで殴りつけてやる」とするビデオメッセージを送り付けたとされる。

そのゾロトフ氏の国家親衛隊も全国各地の部隊から隊員が集められ、ウクライナに駆り出されている。プーチン氏は当初、侵攻から数日で軍事作戦を終結させ、ゼレンスキー政権を排除し、ロシアの傀儡(かいらい)政権を樹立させる計画だった。その際、市民の中には抵抗する勢力もあると想定し、治安活動のために国家親衛隊を送り込んだというのだ。

ところが、思いもよらないウクライナ軍の激しい攻撃でロシア軍が消耗していく中、軍事訓練も受けず、戦闘用装備もないまま最前線に送られた国家親衛隊は、ウクライナ軍の〝砲弾の餌食〟になっているとスペクテイター誌は伝えた。そのような状況からゾロトフ氏の「全て思い通りに進んでいるわけではない」との発言が飛び出したとみられる。

そんな中、同誌は今週、「プーチンの親衛隊さえも反旗を翻した」との見出しで、国家親衛隊の隊員12人が大統領命であるウクライナ派遣を拒否して解雇されたことをめぐり、国を相手取り訴訟を起こしたと報じた。

原告側は国家親衛隊の任務がロシア国内に限り、海外派遣には隊員の合意が必要と契約書に記されていると主張し、派遣拒否での解雇は違法だと訴えている。ごく一部とはいえ、プーチン氏に忠誠を誓った親衛隊内部から不満分子が出てきたことと、ロシアで、しかも有事下での異例の提訴は大きな注目を集めている。

さらに西側を驚かせたのがゾロトフ氏の〝右腕〟とされる親衛隊のローマン・ガヴリーロフ将軍が機密情報漏洩と燃料着服の疑いで逮捕されたことが報じられたことだ。同誌は、ゾロトフ氏はこの不祥事について釈明するため、直ちにプーチン氏との面会を求めたが、拒否されたとしている。

プーチン氏周辺ではインナーサークルのショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長が公の場から一時姿を消し、侵攻に抗議してチュバイス露大統領特使が23日に辞任。また、これまでロシアの金融危機を救ってきたとされるロシア中央銀行のナビウリナ総裁も侵攻を機に辞任を表明したと報じられた。ナビウリナ氏は結局引き留められたものの、関係者らはプーチン氏が「裏切りとみなすだろう」としている。

政権内部で不協和音が生じる中、大統領直轄の国家親衛隊でさえ統制がとられていない状況が露呈された。プーチン氏の終わりの始まりを示す決定的な兆候なのかも知れない。

 

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