2022-03-30 ライフ

深くて長いお付き合い④-日本と台湾の野球―台湾の学校野球部―

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(第4回)


≪少年野球からプロへ≫

音楽でもスポーツでもアートでも、第一線で活躍している人は小さいころに始めた人が多い。プロ野球選手も例外ではなく、少年野球出身がほとんどである。いま日本のプロ野球(NPB)に所属している台湾人選手は1軍・2軍併せて9人、累計では40余名いる。

2019年から日本ハムファイターズでプレーしている王柏融(ワン・ボーロン)は、台湾最南端の屏東出身で、小学校は守備に定評のある復興國小(國小は小学校の意)出身。小中で投手をしていたが、このレベルの選手には珍しく、チャイニーズ台北代表歴はない。その後、常時全国ベスト3に入る超強豪校、穀保高級家事商業職業学校(商業専門学校に相当)では打者に転向した。

張奕(チョウ・ヤク)は台湾東部の花蓮出身で、スポーツに秀でた人を多く輩出している原住民の血をひく。台北の東園國小野球部に参加、この小学校は全国の野球少年の憧れと畏怖の対象で、張奕はエースとして全国大会優勝3回、準優勝5回の実績を残す。全国大会優勝の常連校。その後、日本の高校と大学を経て2017年オリックスに入団。

陽岱鋼(ヨウ・ダイカン)は台湾東部の町、台東出身。小学校時代は中堅校の新生國小でプレー、高校は福岡県の高校に野球進学し、2017年から2021年まで巨人で活躍した。

このように小学校から野球を始め、才能を持った子供たちは、日本と同様に、多くは将来プロ入りを目指す。ただ、人口2千3百万人の台湾では、野球部のある小中学校の数もさほど多くなく、特定の学校に上手な子が集まり、学校間の実力格差が固定し、常勝強豪校が生まれやすい環境である。


 

≪台湾の校隊;学校の野球部は野球道≫

 

台湾では野球が強いと言われる小学校野球部の生徒の授業は午前で終わり、平日の昼から夕方までは練習や対外試合に充てられる。原則として土日は休み。中学、高校では野球部員は全寮制というところが多く、クラスも野球部部員だけで構成されている。プロ野球出身者がコーチをしている学校もたくさんある。野球部員は坊主頭、グランドに入る際のあいさつや、試合前後の整列・礼、審判へのあいさつ、応援してくれた親や仲間たちへの感謝のあいさつなど、強い学校ほど腰の角度が直角に曲がり、全員がちゃんとそろってお辞儀をする。日本のチームとほとんど変わりないほどしっかりした礼儀を学ぶ。これは、台湾の野球がアメリカから入ってきたスポーツとしてではなく、戦前に日本から入ってきた「野球道」として引き継がれてきたからではなかろうか。

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