2021-12-20 ライフ

線香からお香へ。 黒檀の仏壇からリビング仏壇へ。 でも日本人が故人を弔う心には共通点がある

© Reuters / TPG Images

コロナ禍で、葬式は友人知人は集めない家族葬が一般的になった。全ての宗教宗派において儀式は簡略化されつつある。また、その後の弔いの気持ちにもここ10年でかなりの変化が現れている。

マンションや集合住宅の増加で、日本の家庭から昔ながらの黒檀の仏壇が消えつつあるのだ。

仏壇メーカーも「インテリア仏壇」と銘打ち、洋風になったリビングルームなどにも違和感のないコンパクトで洒落たデザインの仏壇を数々登場させている。

昭和の時代まで、特に地方の日本家屋には「仏間」を作るという考えがあった。黒い仏壇が主役となる畳敷きの和室。そこに人が集まったり、布団を敷いて来客が寝たりした。ある意味家の中で、大きな存在感を放っていたのである。

しかし昨今、都心だけではなく、かなり「仏間」という発想は少なくなってきているようだ。

リビングに置く「インテリア仏壇」は、軽んじられているわけではなく、生活者とともに暮らすという意識に置き換わっているのかもしれない。

そんな仏壇に合わせ、線香の形態も変わりつつある。

創業1575年という株式会社日本香堂には「毎日香」「青雲」といった線香のロングセラーがある。こちらはお墓参りなどには今も人気であるが、お線香でも様々な香り、また代替としてお香を使うユーザーも増えてきている。

 

web事業部の白井雅広さんは言う。

 

「一般的な線香の代わりに、さまざまな香りの種類があるお香を使う人は増えているようです。弊社もリビングルームのインテリア仏壇に向けたコーヒーや紅茶の香りの線香を売り出しました。それらも一定層のファンは獲得したようです」

 

そんな中で、長いロングセラーとなっているのが「花の花」というお香だ。年間、23万箱も売れているという。

 

「1911年に天才調香師・鬼頭勇治郎が考案したお香なのですが、明治の文明開花で西洋から伝わった香水の文化を日本の香の文化と融合させているのです。煙たさがなく、すっきりと花の香理が立ち、火が消えた後は、お香らしいしっとりした残り香となって漂います。シングル・ノート、つまりその香りしかしないというものは飽きがきやすいかもしれません。日本人は、かゆらぐ煙、火がついている時の香り、また火が消えてからの残り香といった時間の経過による香りの味わいが遺伝子レベルで染み付いているのでしょう」(白井氏談)

 

故人を畏れ敬い続ける昔から、故人とともに住まい、思い出す弔いへ。形式は変わったようでいて、そこに残り香や余韻を求める心は、今も昔も日本の特長なのかもしれない。