2022-03-28 経済

プーチン氏の〝恐怖政治〟から逃れようと 国を捨てるロシア人激増 その数10万人超

© Photo Credit: Reuters / 達志影像

ロシア軍のウクライナ侵攻で戦火に包まれた首都キエフ周辺や、東部などから命からがら隣国ポーランドやルーマニアなど国外に避難したウクライナ人が、370万人を超えた。一方、プーチン露大統領による〝恐怖政治〟から逃れるためや、ロシアの将来に絶望して国を捨てるロシア人が急増している。

米ニュース専門サイト「ビジネス・インサイダー」によると、ゼレンスキー大統領は先週、ロシア国民に国外に脱出するよう呼び掛けた。国を出て「ロシアへの納税を止め、侵略を継続するための軍事費をこれ以上支えるな」と訴えたのだ。

ゼレンスキー氏の呼びかけを前に、すでに多くのロシア人が国を後にしている。チェコ・プラハに本部を置く米ラジオ局ラジオ・フリー・ヨーロッパは26日、侵攻が始まった2月24日以降、ロシアからトルコ東部と国境を接するアルメニアに逃げたロシア人は数万人、その北に位置するジョージアには3万人、またトルコには1万4000人が避難したと伝えた。

ロシア・バシコルトスタン共和国の首都ウファで、IT技術者として働いていたアルチョーム・サプリキンさん(28)もアルメニアに逃げた1人だ。その理由についてサプリキンさんは、「もうロシアに将来はないことが分かったから」と説明。「ずいぶん前から分かっていたけど、(ロシアを出ることを)決めかねていた。でも、戦争を始めたことでこの国の状況は、自分が思っていたよりずっと酷いことを理解した」とし、故国を去る腹をくくったという。

ロシア脱出には周到に準備をする必要があった。サプリキンさんは旅行と見せかけるため、事前に帰りの切符を購入。パソコンデータは暗号化したり、消去したり、クラウドに保管した。スマートフォンにはロシアなどで人気のSNSアプリ「アドナクラースニキ」をわざと残し、怪しまれないように「キャベツの漬物のレシピとか家の修繕方法とかのハウトゥーものをたくさん入れた」という。

出発当日の今月15日、国境の検問所でIT技術者の身分がバレたサプリキンさんは、当局の尋問を受けるはめになった。スマホが検査され、ウクライナでの〝特別軍事作戦〟に対する意見を聞かれたり、「プーチンを愛しているか」とまで確認されたという。また、バッグの中身を全てチェックされ、待つこと40分、ようやく出発が許されたとサプリキンさんは語った。

また、カナダCBCニュースは、ロシアと欧州連合(EU)をつなぐ唯一の鉄道を使ってフィンランドに逃げるロシア人も毎日700人に上ると報じた。ウクライナ侵攻以後、その数、すでに約3万人。この路線はフィンランドの国有鉄道VR社が運営するもので、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクとフィンランドの首都ヘルシンキの間、約300キロを結んでいる。

今月中旬、人でごった返したヘルシンキ中央駅に到着し、不安そうな表情で列車を降りた25歳のロシア人女子大生は、身元を明かさないことを条件にCBCの取材に応じた。女性は「ロシアは今、政情不安です」と漏らし、ロシア国内に広がる緊迫感のためパニック障害になったと明かした。

女性はスマホを取り出し、サンクトペテルブルクで撮った写真を見せた。1枚はウクライナ支援を訴えてウクライナカラーの黄色と青のリボンを街路樹に結んだもの。もう1枚は地下鉄の駅にあるモニターにロシア軍支持を示す文字「Z」を大写しにしたもの。国が2分されていることを如実に物語っていた。

「数人の友達が逮捕されて、罰金刑になった人とか、釈放された人もいます」と話した。そして同胞のボーイフレンドと合流するためヘルシンキに来たが、いつ帰国するかは分からないと告げた。

この女性が国外脱出に利用した同路線について、VR社は28日で運用を停止する。理由は西側のロシアへの経済制裁の一環だ。

実はロシア人の国外脱出はウクライナ侵攻前から始まっていた。

多くのロシア人は米国へ亡命申請し、中南米からの移民やメキシコ人、避難してきたウクライナ人に交じり、ごった返したメキシコ最北端の町・ティフアナにある米国の国境検問所で入国審査を待っている。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、今年最初の2か月間にメキシコへ入国したロシア人は3万人に上り、この数字は2017~21年の年間平均の2・5倍。その数はさらに増え続けている。

米国のバイデン政権はウクライナ人10万人の受け入れを発表していることから、ウクライナ人の米国入国は比較的順調に進んでいるが、中南米からの移民同様、多くのロシア人は入国が拒否され、ティフアナでの路上生活を余儀なくされていると米CBSなどが27日報じた。

祖国を脱出したロシア人は、すでに数10万人を超えているとみられる。プーチン政権が存続する限り、国を捨て、海外で放浪するロシア人は増え続けるだろう。

 

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