皮肉にも、候補の中で一番中国寄りとみられているのがマルコス氏だ。今年1月にはメディアのインタビューで、同氏は16年の国際司法裁判所による判断にかかわらず、中国との関係強化を継続すると主張した。
「16年の判断」とは南沙諸島をめぐり、中国が一方的に人工島を建設するなどフィリピンの領有権を侵害したとしてハーグの国際裁判所に提訴し、同裁判所は中国の主張に法的根拠がないとしたもの。中国はこの判断を認めないとし、同諸島周辺での活動を続けている。
国益に関わる中国との領有権問題を棚上げし、2国間関係を強化するとしていたマルコス氏だが、先月のテレビ討論会では一転。フィリピンは南シナ海での軍事プレゼンスを示す必要性があるとし、「中国に対してわれわれが自分たちの領海を守る姿勢を見せなければならない」と訴えた。この変節ぶりは、明らかに国民感情を意識してのものだ。
ドゥテルテ大統領は20年、中国が南シナ海を掌握していることについて、「中国は兵器を持っている。われわれには無い。簡単なことだ。彼らはすでに領海を所有している。われわれは何もできない」と発言し、領有権争いで事実上の敗北を認めた。これにより国民の反中感情が沸騰。各候補の対中姿勢が問われている。
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