2022-03-25 経済

5月のフィリピン大統領選の焦点は中国政策 圧倒的人気候補は独裁者・故マルコス氏長男

© Photo Credit: Reuters / 達志影像 Bongbong Marcos

フィリピンの大統領選挙が5月9日に行われる。ドゥテルテ大統領(76)率いる与党・PDPラバンは今週、最有力候補と目されるフェルディナンド・マルコス元上院議員(64)を支持することを正式に決定。勢いづくマルコス氏は当選に向け、与党の後押しが決定的な追い風になりそうだ。

そのマルコス氏は長期独裁政権を敷いた故マルコス大統領の長男だ。1986年のエドゥサ革命により失脚したものの、出身地である首都マニラがあるルソン島北部ではいまだ根強い人気があり、マルコス時代を懐かしむ有権者も多い。当然、同候補の知名度も圧倒的だ。

独立系調査会社「パルス・アジア」による最新の調査によると、マルコス氏の支持率は60%に上り、自由党のレニー・ロブレド副大統領(56)の15%や元俳優でマニラ市長のイスコ・モレノ氏(47)の10%、フィリピンのボクシングレジェンド、マニー・パッキャオ氏(43)の8%など他候補を大きくリードしている。

現時点で2位につけているロブレド氏は現副大統領でありながら、反ドゥテルテ派の筆頭格として、野党各党からの支持を得ている。

一方、与党は今回の大統領選で候補を立てておらず、ロイター通信は「ドゥテルテ大統領が個人的にどの候補を支持するのかは、まだ明らかになっていない」と伝えた。ただ、党関係者は、「マルコス氏が掲げる公約が、ドゥテルテ大統領が進めてきた開発計画と最も合致する」として、党としての支持を決めた理由を説明した。

米CNBCによると、フィリピンウォッチャーは新政権による対中国政策に注目している。同国の大統領選挙では通常、外交は争点にならないが、「今回は事情が異なる」とマニラのデ・ラサール大学のシャーメイン・ミサルーチャ・ウィロビー教授は指摘する。

「2022年の大統領選では候補者は中国政策について明確にする必要がある」とし、その理由は、「もし大統領が特定の国だけをえり好みをするようなことがあれば、その影響は一つの政権に留まらないからだ」と説明し、ドゥテルテ氏の中国偏重に言及した。

ドゥテルテ氏は2016年に大統領に就任すると極端な外交政策に舵を切った。米国からの〝決別〟を宣言すると同時に、中国との関係を強化したのだ。ただ、中国に軸を置いたものの、北京政府が保証したフィリピンへのインフラ投資は実現していないのが現状だ。

そんな中、比中両国が領有権を争う南シナ海では、国際的にフィリピンの領海として承認された同海にある南沙諸島周辺に中国が侵入を続け、緊張が高まったままだ。その結果、ドゥテルテ政権内からも反中発言が増え、世論調査でも中国への懐疑的な見方がほとんどだ。専門家は、そのような国民感情が次期大統領をドゥテルテ氏の中国寄り政策から方向転換させることになると分析する。

皮肉にも、候補の中で一番中国寄りとみられているのがマルコス氏だ。今年1月にはメディアのインタビューで、同氏は16年の国際司法裁判所による判断にかかわらず、中国との関係強化を継続すると主張した。

「16年の判断」とは南沙諸島をめぐり、中国が一方的に人工島を建設するなどフィリピンの領有権を侵害したとしてハーグの国際裁判所に提訴し、同裁判所は中国の主張に法的根拠がないとしたもの。中国はこの判断を認めないとし、同諸島周辺での活動を続けている。

国益に関わる中国との領有権問題を棚上げし、2国間関係を強化するとしていたマルコス氏だが、先月のテレビ討論会では一転。フィリピンは南シナ海での軍事プレゼンスを示す必要性があるとし、「中国に対してわれわれが自分たちの領海を守る姿勢を見せなければならない」と訴えた。この変節ぶりは、明らかに国民感情を意識してのものだ。

ドゥテルテ大統領は20年、中国が南シナ海を掌握していることについて、「中国は兵器を持っている。われわれには無い。簡単なことだ。彼らはすでに領海を所有している。われわれは何もできない」と発言し、領有権争いで事実上の敗北を認めた。これにより国民の反中感情が沸騰。各候補の対中姿勢が問われている。

 

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