注目ポイント
専門家はこう述べる。「今年の収穫はあまり良くなかったものの、かといってすごく悪いわけでもない。過去数年ほど良いわけではないが、実際悪くはありません。新聞の見出しには全て『メープルシロップ不足』とありますが、実際にメープルシロップの供給は中断されておらず、備蓄もあるのでそれ程深刻な状況ではありません」
メープルシロップが再びカナダのトップニュースに
石油価格の高騰により、アメリカのジョー・バイデン大統領は、緊急事態に備えた国の石油貯蔵を戦略的に解放したが、お隣カナダでは「液体の黄金」不足に直面していた。カナダのメープルシロップ生産者協会(QMSP)は最近、市場の高い需要を満たすために、約5,000万ポンド(備蓄量全体の約半量)のメープルシロップを放出すると発表した。
カナダのケベックメープルシロップ商工会議は2000年に発足され、メープルシロップ業界の石油輸出国機構(OPEC)と呼ばれる。緊急事態に備えたメープルシロップの備蓄可能上限は約1億ポンド(45,000トン)あり、市場で不足した場合にはその備蓄を使用し、メープルシロップの価格を安定させている。2020年の時点で、ケベック州は世界のメープルシロップの73%近くを生産し、60か国以上に輸出している。中でも最大の輸出先はアメリカであり、カナダのメープルシロップの総輸出量の60%を占める。
今年のカナダの春は異常に暖かく短かったために、ケベックでのメープルシロップの出来があまり良くなかった。歴代の収穫量から見ると、年間平均生産量約60,000トンと一致しているものの、2020年と比較すると18,000トン減少している。それに対し、新型コロナウイルスの流行により世界の需要は激増しており、昨年のメープルシロップの売上高は21%増加し、現在の需要供給バランスの乱れを生み出している。
ケベック州メープルシロップ商工会のヘレネ・ノーマンディン氏はこう話す。「この(メープルシロップの備蓄)システムは、ほぼ全ての在庫不足を防ぎ、安定した供給を行うことが出来る。これがメープルシロップを備蓄する最大の理由であり、我々はもうメープルシロップ無しではいられないのだ!」と。ノーマンディン氏はこうも続けた。「来年のメープルシロップの収穫は、通常よりも早い2月上旬にはもう始まると予想しているので、我々はそれに備えて準備を開始しています」
メープルシロップの収穫は天候に大きく左右される。日中の気温が0度を超え、夜は氷点下に下がらなければ樹液は採取できない。メープルシロップの収穫は通常2月下旬から4月末まで続く。樹木は樹齢30~40年程度に達さないとシロップの収穫が出来ず、収穫方法は金属製の蛇口を収集箱に繋げ、真空にすることでその吸い上げる力を利用し収穫している。ケベック州には現在、メープルシロップの収穫ができる樹が5,000万本あるが、市場拡大が見込まれるため、今後数年をかけてさらに700万本の樹が増やされる予定だ。