2021-12-16 ライフ

異常気象が原因?カナダの“液状の黄金”メープルシロップ 収穫量が減少したため生産者協会が備蓄の約半分を放出

© REUTERS/TPG Images

注目ポイント

専門家はこう述べる。「今年の収穫はあまり良くなかったものの、かといってすごく悪いわけでもない。過去数年ほど良いわけではないが、実際悪くはありません。新聞の見出しには全て『メープルシロップ不足』とありますが、実際にメープルシロップの供給は中断されておらず、備蓄もあるのでそれ程深刻な状況ではありません」

メープルシロップが再びカナダのトップニュースに


石油価格の高騰により、アメリカのジョー・バイデン大統領は、緊急事態に備えた国の石油貯蔵を戦略的に解放したが、お隣カナダでは「液体の黄金」不足に直面していた。カナダのメープルシロップ生産者協会(QMSP)は最近、市場の高い需要を満たすために、約5,000万ポンド(備蓄量全体の約半量)のメープルシロップを放出すると発表した。


カナダのケベックメープルシロップ商工会議は2000年に発足され、メープルシロップ業界の石油輸出国機構(OPEC)と呼ばれる。緊急事態に備えたメープルシロップの備蓄可能上限は約1億ポンド(45,000トン)あり、市場で不足した場合にはその備蓄を使用し、メープルシロップの価格を安定させている。2020年の時点で、ケベック州は世界のメープルシロップの73%近くを生産し、60か国以上に輸出している。中でも最大の輸出先はアメリカであり、カナダのメープルシロップの総輸出量の60%を占める。


今年のカナダの春は異常に暖かく短かったために、ケベックでのメープルシロップの出来があまり良くなかった。歴代の収穫量から見ると、年間平均生産量約60,000トンと一致しているものの、2020年と比較すると18,000トン減少している。それに対し、新型コロナウイルスの流行により世界の需要は激増しており、昨年のメープルシロップの売上高は21%増加し、現在の需要供給バランスの乱れを生み出している。


ケベック州メープルシロップ商工会のヘレネ・ノーマンディン氏はこう話す。「この(メープルシロップの備蓄)システムは、ほぼ全ての在庫不足を防ぎ、安定した供給を行うことが出来る。これがメープルシロップを備蓄する最大の理由であり、我々はもうメープルシロップ無しではいられないのだ!」と。ノーマンディン氏はこうも続けた。「来年のメープルシロップの収穫は、通常よりも早い2月上旬にはもう始まると予想しているので、我々はそれに備えて準備を開始しています」


メープルシロップの収穫は天候に大きく左右される。日中の気温が0度を超え、夜は氷点下に下がらなければ樹液は採取できない。メープルシロップの収穫は通常2月下旬から4月末まで続く。樹木は樹齢30~40年程度に達さないとシロップの収穫が出来ず、収穫方法は金属製の蛇口を収集箱に繋げ、真空にすることでその吸い上げる力を利用し収穫している。ケベック州には現在、メープルシロップの収穫ができる樹が5,000万本あるが、市場拡大が見込まれるため、今後数年をかけてさらに700万本の樹が増やされる予定だ。


ノーマンディン氏は「今回の新型コロナウイルスの流行により、今までよりも多くの人が家で料理をするようになり、地元の人も今まで以上に地産品であるメープルシロップを使うようになりました。そのおかげで私たちは大きな利益をあげることができました」と語った。

 

カナダのRCIニュースによると、コーネル大学のメープルシロップ研究室(Uihlein Forest)の前室長マイケル・ファレル氏は、メープルシロップは桶に入れ正しい管理方法で保存した場合、何年も保管できるものである、と述べた。「このように、生産量が少なくなってしまった年でも、人々がワッフルの上にかけるには十分な量があります。ただ、今年解放したような備蓄分がなければ、店頭は品薄になり価格も高騰してしまいます」

 

必ずしも毎年が豊作なわけではない。バーモント大学のプロクターメープルシロップ研究所の准教授であるアビーヴァンデン・バーグ氏はこう指摘する。「今年は様々な場所で生産時期の後半になってから好天が続き、樹液が流れるようになりました。今年の収穫はあまり良くなかったものの、かといってすごく悪いわけでもない。過去数年ほど良いわけではないが、実際悪くはありません。新聞の見出しには全て『メープルシロップ不足』とありますが、実際メープルシロップの供給は中断されておらず、備蓄もあるのでそれ程深刻な状況ではありません」


CBCニュースによると、ケベック州サン=タンヌ=ド=ラ=シェルにあるブレインメープルシロップという、メープルシロップボトルの包装と販売を行っている会社の社長であるフィリップ・チャースト・ビュードリー氏は、現時点での生産すべき量は確保出来ていると話し「私はこれまで、業界他社の生産量が不足しているという話は聞いたことがありません。私たちから見ても、需要と供給バランスの乱れは一時的なもので、すぐに解決出来ると思います。よって、来年の店頭にもメープルシロップはちゃんと並びます」


メープルシロップがカナダのトップニュースになったのはこれが初めてではない。2011年8月~2012年7月までの間、カナダ史上最大のメープルシロップ盗難の被害が出たのだ。犯人達は、ケベック州サン=ルイ=ド=ブランフォールから9,500本の桶、重さにすると2,700トンものメープルシロップを盗みだした。被害額は1,800万ドルにも達した。(当時、メープルシロップ桶1本あたりの価格は同量の原油の13倍)


当初倉庫からは4,500トンのメープルシロップが盗まれたと思われていたが、2012年7月の定期的な在庫確認時に、シロップが入っているはずの桶に水が入っていたことが発見され、カナダ中を震撼させる大事件となった。カナダとアメリカの警察による合同捜査の後、2012年10月に26人の容疑者が逮捕された。逮捕された密売人のリチャード・バリエールは、裁判で「盗まれたメープルシロップを受け取ることを拒否したが、ヤクザ達に自分や彼女・子供を殺す、お前の家は分かっている、等と脅され仕方なく密売した」と証言した。

 

 

〈参考記事〉

 

原文作者:吳宗宜
原文責任編集者:羅元祺
原文校閲者:翁世航
翻訳者:黄群儒
校閱者:TNL JP編集部
 

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