2021-11-30 ライフ

サイバー攻撃部隊の手法が有効だと科学的に実証 人間の脳は「コンテンツファーム」や偽情報にひかれやすい

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注目ポイント

このインターネット時代、押し寄せる膨大な情報に人間の脳は対応しきれず、実際に一つ一つチェックすることはもはや不可能となっている。だからこそ、信頼する友人の情報を「シェア」し、また初に「エコーチェンバー」の情報を信じる傾向が生まれている。

コミュティサイトで「いいね!」や「シェア」の数字が多いほど、「コンテンツファーム」や偽情報がより多くのユーザーをひきつけ、そしてより多くの人に読まれることになる。

 

これがネット社会の現実。人間の脳は高潮のように押し寄せる情報を区別してチェックする余力はなく、「質の低い意見」であっても、多数の「いいね!」や「シェア」があると、私たちはつい信じてしまう傾向がある。ここに「サイバー攻撃部隊」の出番が生まれる。

 

ネット上には無数の偽アカウントが存在していることは、誰もが知るところだ。青い目で金髪の外国人だったり、アバターがなかったり、偽のアバターだったり。クリックして入ってみると、そこに生身の人間が残したパブリックコメントは存在しない。偽アカウントの運営にも当然コストがかかる。

 

これらの偽アカウントもすぐに偽物と特定、ブロックされてしまう。では多くの人が、そこまでする理由は何なのだろうか?それは、アカウントがたくさんの「いいね!」や「シェア」の数字で支持されることで、コンテンツファームからの文章もすぐに見てもらえるからである。信頼を獲得しやすくなり、投資する価値も生まれる。

 

昨年、ハーバード大学のメディア、政治、公共政策センターが、入念に設計した模擬コミュニティサイト・インタフェースの情報プラットフォームを用い、様々な人のオンライン上の行動を検証して研究結果を発表した。研究者が作成したFakeyというウェブサイトに8,500人(大多数はアメリカ人)が招かれ、そこに12万本の文章を掲載した。

 

それらの文章の半分は主要メディアのもので、残りの半分がファクトチェックサイトで「コンテンツファーム」と確認されたものであった。そして19か月に渡って、ユーザーの利用行動が記録、観察された。

 

一つの文章を発表するごとに、コミュニティサイトと同じように写真とキャプション、短い要約文をつけ、そして何人が「いいね!」や「シェア」をしたか表示した。統計がとりやすく、またユーザーの認知負担を軽くするため、「いいね!」や「シェア」は合計数を表示した。実はこの数字はランダムに生成されたものだ。


 さらに数字の下に「シェア」、「いいね」、「ファクトチェック」、「スキップ」のボタンを配置し、ユーザーには文章を読む際にボタンを1つ選択するよう要求したのである。


残念ながら、大方の予想通り、「コンテンツファーム」が配信された時に表示された「いいね!」や「シェア」の数字が大きいほど、実際に「いいね!」や「シェア」を獲得した数が多く、「ファクトチェック」ボタンをクリックする割合は低かった。大きな差はないものの、1人の実在する人が「シェア」することで、数百人にコンテンツファームのタイトルを閲覧させることができ、偽アカウントに投資したコストはすぐに回収できるのである。


このインターネット時代、押し寄せる膨大な情報に人間の脳は対応しきれず、実際に一つ一つチェックすることは、もはや不可能となっている。だからこそ、信頼する友人の情報を「シェア」し、最初に「エコーチェンバー」の情報を信じる傾向が生まれているのだ。

 

「いいね!」や「シェア」の数で、「コンテンツファーム」の方が信頼に値すると認識され、同様に「エコーチェンバー」からの情報も読まれやすくなる。PTTアカウント(台湾最大の電子掲示板)もその価値があるため、「ツイート数」を増やし、文章の拡散を助長するために購入する人が存在する。


これらコンテンツファームが拡散されるメカニズムは、フェイスブックなどのプラットフォームに責任があるのだろうか?それとも結局は人間の脳の問題なのだろうか?研究者はネットワーク・プラットフォームに対し、「いいね!」数や「シェア」数を非表示にするよう考慮すべきだと提案した。しかし、数字が表示されないと、ユーザーは「いいね!」や「シェア」をするきっかけがなくなり、プラットフォームのアルゴリズムは重要な根拠を失うことになる。

 

記者が苦労して書いた調査報告も、人間の脳内では、強烈な扇動性や娯楽性があるコンテンツファームより重要性は低いと判断されてしまう。これは言わばインターネット時代の悲哀であり、解決の糸口は見えない。

 

原文作者:陳豐偉
原文責任編集者:蕭汎如
原文校閲者:翁世航
翻訳者:TNL JP編集部
校閱者:TNL JP編集部