北朝鮮の不穏な動きが活発化している。韓国軍は20日午前、北朝鮮が1時間にわたり放射砲(多連装ロケット砲)を4発発射したと発表。その4日前の16日にはICBM(大陸間弾道ミサイル)とみられる飛翔体を発射したものの、高度20キロ以下の初期段階で爆発し、実験は失敗した。
今年に入り北朝鮮はすでに10回以上ミサイル発射を繰り返しているが、金正恩総書記がエスカレートさせる挑発行為の最終目的は何なのか。AP通信によると、北朝鮮に詳しい専門家の多くは、「複数の核弾頭を装備でき、米国全土のターゲットを正確に狙えるICBMの技術と、軍事偵察衛星を宇宙空間に打ち上げること」が目的だと分析している。
「成功すれば、新たに強力な兵器を軍備に加えると同時に、国民の支持を高め、ウクライナなど重大な問題を抱える米国のバイデン政権と今後、交渉を実現するための有利なカードを増やすことになる」とAP通信は解説する。
そのため、正恩氏が今後数年内の完成を目指すのが、モンスター級の巨大ICBMだという。
16日の発射実験失敗の前、北朝鮮は中距離弾道ミサイルを2度発射。北朝鮮側はこれを偵察衛星用カメラの実験だったと主張しているが、米韓当局は、2020年の軍事パレードで初披露した開発中の新型ICBMのテスト発射だったとみている。
その新型ICBMは「火星17」という長さ25メートルの北朝鮮最長ミサイルで、一説には「世界最長の移動式弾道ミサイル」とされるものだ。射程距離は1万5000キロにもおよび、米国全土をカバーすることになる。
17年に発射実験をした別のICBMも米国を射程に収めるものが存在するが、「火星17」はそのサイズから搭載量は大きく、ミサイル防衛システムを突破できる複数の核弾頭を装備できる可能性を専門家は指摘する。
韓国航空大学校のミサイル専門家チャン・ヨンウン氏は、「3個の弾頭を装備すれば、1つ目はワシントンに、2つ目はニューヨークに、3つ目はシカゴに落とすことができる」と説明した。
2月27日と今月5日に行った弾道ミサイル発射は「火星17」の1段目のロケット実験で、16日の失敗も同ICBMのロケットの一部を発射したものだったと韓国当局はみている。
「火星17」に並び、正恩氏にとってもう一つの重要な目標が軍事偵察衛星だ。北朝鮮はすでに2つの地球観測衛星の打ち上げに成功しているが、その主な目的は観測衛星そのものではなく長距離ミサイルの技術開発だったとされる。その証拠に2つの衛星が、これまで地球観測をした映像を送った形跡はないという。