2021-12-15 経済

17日で10年迎える金正恩政権の北朝鮮が核開発で米国と 対峙する裏側には中国からの援助を引き出す戦略が…

北朝鮮の金正恩氏が最高権力を継承して17日で10年を迎える。当初は未熟とみられた正恩氏の新政権は、いずれ集団指導体制が敷かれるか、もしくはクーデターにより制圧されると推察された。ところが、まだ20代後半だった正恩氏は身内でさえ冷酷に粛清するなど、たちまち独裁体制を確立させた。そんな正恩氏は今、生涯最大の岐路に立たされているという。


正恩氏は2011年12月17日、父親・金正日総書記が69歳で急逝すると、三男でありながら“金王朝”の3代目を踏襲した。同30日には北朝鮮人民軍120万人の最高司令官に就任。これが父親から引き継いだ最初の役職だった。


その後、同国の支配政党である朝鮮労働党中央軍事委員会委員長や同国務委員会委員長など次々とトップポストに就き、今年1月ついに最高指導者の証である朝鮮労働党党総書記に就任した。


だが、米公共放送ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)は、正恩氏が10年目にして最も困難な時期に直面していると指摘する。国連制裁やコロナ禍、経済問題など課題は山積で、もし正恩氏が核兵器開発と瀕死の経済立て直しの両方を実現できなければ、長期支配が揺らぐというのだ。


実際、正恩氏は数年間で貿易と市場中心の改革により一定の経済回復を成し遂げた。ところが、米国、日本、韓国などを仮想敵国とし、核・ミサイル開発を急ぎ、核実験やミサイル発射を繰り返した結果、2016年にはより厳格な国連制裁措置を科せられることになった。その影響は小さくなく、国内経済は再びひっ迫した。


追い詰められた正恩氏は18年、当時のトランプ米大統領と史上初の米朝首脳会談に応じ、世界的な注目を集めた。首脳会談は翌年にかけて計3度行われたが、結局、米国から制裁解除など譲歩を引き出すことに失敗。そして今、「正恩氏は国内に引きこもったまま、コロナ禍による国境封鎖でさらに行き詰った経済と奮闘している」とNPRは解説する。


しかもバイデン政権の米国にとって、北朝鮮側が核兵器開発を自主的に凍結しない限り、北朝鮮との首脳会談再開は喫緊(きっきん)の課題ではない。つまり、正恩氏はすでに手詰まり状態だというのだ。


頼みの綱である中国との経済活動もコロナ禍により激減。韓国の諜報機関によると、今年9月時点で対中国の年間貿易額は前年度比約66%減の1億8500万ドル(約210億円)にまで落ち込んだ。結果として食糧不足、物価の高騰、医療品不足などで国民は困窮。生活必需品の欠如による不衛生な環境が原因で、腸チフスなどの飲み水を介する伝染病が広がっていると同機関は伝えている。


それでも正恩氏は、北朝鮮にとっての“伝家の宝刀”の核兵器開発を放棄することはあり得ないと韓国・ソウルにある国民大学校のアンドレイ・ランコフ教授は断言する。しかも、核をめぐり米国と対峙することで中国への自国の戦略的価値を高め、国家を存続できるぎりぎりの食料や燃料などの支援を中国から得ることができるのだという。


ランコフ氏は正恩氏が「経済発展の代わりにスタグネイション(経済の停滞)という現状維持で妥協している」と分析する。


国民の犠牲の上で、どこまで核兵器開発を継続できるのか、北朝鮮をめぐる緊張は続く。

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