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新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン」が世界で急拡大する中、英政府は13日、同株に感染した患者が1人死亡したと発表。オミクロン株による死者が確認されたのは世界でも初とみられる。果たしてこの「懸念すべき変異株」の正体とは―。
米誌「ニューヨーカー」は、これまでに分かっていることとして、「オミクロン株がデルタ株より感染力が強いことはほぼ確実」と説明。そのデルタ株はそれ以前の株より感染拡大スピードが2倍以上だったと付け加えた。
11月に世界で最初にオミクロン株が確認された南アフリカでは、同月中旬の新規感染者は1日平均約300人程度で、PCR検査結果も陽性率が2%ほどで推移していた。ところが、わずかひと月ほどの今月9日、オミクロン株の感染拡大で1日の新規感染者は2万2000人にまで激増し、陽性率も20%を超えた。だが、意外にも南アの医療体制はひっ迫していないというのだ。
同国の首都プレトリアにある大型医療機関は今月上旬、臨床データを発表した。その報告書によると、12月2日時点で同株に感染し、同機関に入院中のコロナ患者は42人で、うち酸素吸入が必要な患者は14人だった。ただし、その全員がコロナ感染による酸素吸入器の使用ではないとしている。また、集中治療室に収容されたのはわずか1人だったという。
また、ここ数週間の平均入院日数は、以前の9日間に比べ大幅に縮小し、3日間。致死率も以前の約3分の1程度に減ったという。
一方、同国のアフリカ健康研究所(AHRI)は、米ファイザー製ワクチンを2回接種した場合、オミクロン株に対する有症状感染を防ぐ有効性は22・5%だったものの、重症化を抑えることができたという試験結果を発表した。
AHRIは、「感染を防御するワクチンの効果は損なわれるが、重症化を防ぐ可能性は高い」とした。
そんな中、WHO(世界保健機構)はオミクロン株がデルタ株と置き換わることになるだろうとの見方を示した。これに呼応するように英国のジャビド保健相は13日、「ロンドンの感染者のうち(オミクロン株は)すでに44%以上と推定され、48時間以内には過半数に達するとみられる」と述べた。
また、英国の研究チームは感染対策を今以上に強化しなければ、同国は来年1月にオミクロン株による大きな感染の波に直面することになると警告したと英BBCが伝えた。同チームはまた、ワクチンの効果次第では、来年4月末までに2万5000人~7万5000人がオミクロン株で死亡する可能性があるとの見方もある。
英政府によると、オミクロン株への感染者数は13日時点で計4713人に上り、1週間で14倍以上に増えた。ただ、同株による入院者はロンドンを含むイングランドで10人だという。
日本国内でのオミクロン株感染が確認されたのは13日時点で17人。世界では62か国・地域に広がっている。まだまだ得体の知れないこの変異種。「デルタ株より弱毒化している可能性」を指摘する声もあるが、予断は許されない。