2022-03-29 地方創生

オンデマンド交通は地域社会の救世主となり得るか:MaaSが導く日本の未来(第3編)

© Shutterstock / 達志影像

本シリーズの最終稿となる本編では、日本における様々な取組みなども紹介しながら、MaaSを通じての将来的な展望にも触れていく。

MaaSの発祥地とも言えるヨーロッパ諸国においては、情報通信機器を活用したシームレスな交通サービスの構築に主眼を置いて施策が展開されており、また同時に、SDGs(持続可能な開発目標)に対しても積極的かつ先進的な取り組みがなされていることから、官民一体となってMaaSに取り組んでいる点に特徴があるといえる。また、これらを通じて、マイカー利用率の低下などといった、共通目標に向けての検証可能な具体的成果が見出せていることもMaaSを推し進める原動力となっている。

地域特性に合わせた日本型MaaS

移動手段の効率化や環境保全などに主眼をおいて推進されるヨーロッパ型MaaSに対して、日本型MaaSにおいては、地方創生や地域生活の向上にも重きが置かれ、大都市以外の地域で、移動サービス以外の分野と連携した展開が多いのも一つの特徴である。

地域特性を活かすという側面においては、全国各地の観光資源と交通サービスを連動させた地域・観光型MaaSは、日本型の展開を象徴する一つのサービスモデルともいえる。JR東日本や東急、小田急電鉄などが先駆けとなって本格的な取り組みが開始されて以来、全国各地の交通サービスや民間の主導で積極的な取り組みが行われている。

観光が地域の主要産業となっている沖縄県を例にとると、県内のモノレール、バス、フェリーなどの交通手段や観光施設、商業施設などの様々なチケットがオンラインで購入できるサービスが提供されており、これまでレンタカーを利用しなければ足を伸ばすことができなかった周辺の観光スポットへもアクセスが可能になっている。また同時に、道路の混雑や違法駐車による生活環境の悪化、さらには自然破壊といった観光地特有の二律背反する課題の解消にも大いに期待が寄せられているという。

日本のMaaSになくてはならないもの

日本のMaaSを語る上で、どうしても欠かすことができない要素は、地方型ともいわれるMaaSの展開である。実際に、大都市になればなるほど交通サービスが整備され、公共交通機関の利用割合が高い傾向を示すが、地方都市になるほど公共交通機関の利用割合は低くなり、自家用車の利用率が飛躍的に高くなる。人口10万人以下の地方都市ともなると、公共交通機関の利用はほとんどなく、ほぼ自家用車による移動が主流となっている。

これらは、都市への人口過密化と地方の過疎化という普遍的な課題を象徴するものでもあるが、世界一の超高齢化社会であり、既に人口減少が現実のものとなっている日本社会の未来を語る上でも非常に重要な問題である。その意味において、経済産業省と国土交通省の主導によって、30を超える地域と民間が連携して展開する「スマートモビリティチャレンジ」も移動課題の解決と地域活性化を目指すプロジェクトとして期待されており、これらプロジェクトも含め、公共交通機関が整備されていない地域における「オンデマンド交通サービス」という概念は、日本型MaaSを推進する上での重要なキーワードの一つとなっている。もちろんこれには自動運転技術などのテクノロジーの進化や、新たな都市設計といった要素も外して考えることはできない。

岩手県紫波町が示唆する日本の未来

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