2022-03-22 経済

オンデマンド交通は地域社会の救世主となり得るか:MaaSが導く日本の未来(第2編)

© Shutterstock / 達志影像

「MaaS」をテーマに取り上げた本シリーズの第1編では、JR東日本主導により展開する岩手県一関エリア及び岩手県紫波町が取り組むそれぞれのモデルケースを、本サイトの体験取材レポートを通じて紹介したが、第2編となる本編では、MaaSの起源をたどりながら、日本の交通環境や課題、また求められる要件などに焦点を当てて取り上げる。

MaaS」のはじまり

一般的に認識される「MaaS(マース): サービスとしてのモビリティ」の定義を広い意味で捉え簡略化すると、「情報通信技術を活用してマイカー以外の移動をシームレスにつなぐ」という概念となる。2006年にフィンランドのサンポ・ヒエタネン氏(現マースグローバル社CEO)が発案したアイディアがそのベースとなっており、同社が開発したスマートフォンアプリ「Whim(ウィム)」が先駆けとなって、北欧・EU諸国などのヨーロッパを中心に、アプリ一つで公共交通機関、タクシー、レンタカーなどの手配から決済までを簡単に行えるサービスが発展してきた。

現在ではヨーロッパ諸国に加え、アジアにおいても台湾、中国(上海)、シンガポールなどでもMaaSに対する積極的な取り組みが進んでおり、ここ日本でも鉄道会社や民間主導の様々な施策展開に加え、情報通信や自動運転などの新たな技術開発が進む中、単なる移動手段の提供のみならず、利用者にとっての一元的なサービスとしての取り組みも行われている。

日本の地域特性と交通事情

MaaSへの取り組みを進めるにあたり、当然のことながら大都市圏と地方の郊外エリアとでは、交通事情も含めた社会環境が大きく異なり、交通サービスという側面においても、それぞれが抱える問題や課題にも違いがある。極端な例でいえば、東京や大阪などの大都市圏は、人口の集中にともない、交通機関や道路の混雑は避けられない問題であるが、反面では鉄道網が非常に発達しており、JRや私鉄の駅を降りるとバスやタクシー乗り場も常設されているため、ラストワンマイルの移動にさほど困ることはない。また、スマホの乗り換えアプリや地図アプリを使えば、複数の交通機関をまたいだ最適なルート検索や、交通系ICカードによるスムーズな決済も可能となる。

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しかし、ひとたび都市部から離れると、その事情は一変する。都市部からの距離が離れるにつれ、人口密度に比例して(それ以上に)鉄道網の敷設率も低下し、公共交通機関の稼働率も著しく低くなっていく。そのような地域では自ずとマイカーへの依存度は高くなり、同時に公共交通サービスそのものの運営維持が一層困難になるといった悪循環を招いている。

特に地方に暮らす人々にとって、マイカーに依存せざるを得ない生活環境と、近年様々に取り沙汰される高齢者ドライバーによる交通事故の問題は、非常に切実かつ悩ましい課題でもある。高齢化が進むにつれ、また身体の運動機能が低下するにつれ、事故を起こす可能性が高まることは誰もが認識しつつも、その代替えとなる十分な交通サービスが整っていない現状においては、そのリスクと裏腹に、日常生活が立ち行かなくなってしまう現状が立ちはだかり、周囲の心配をよそに、ドライバーズライセンスを手放せない高齢者が多数いることも見逃せない事実である。

日本に求められるMaaSの取り組み

その意味において、日本でのMaaSの展開にあたっては、「都市型」「郊外型」「地方型」「過疎地型」などといわれるように、地域特性に応じた取り組みが求められ、また観光、福祉、医療など、それぞれの目的に応じた独自のMaaS展開も進んでいる。

スマートフォンなどの情報通信機器を活用して、“最適な”交通サービスを提供するということは、MaaSが果たすべき大きな使命の一つであり、情報通信技術の進歩がその牽引役となっていることは間違いない。しかし、地域特性や目的に適応し、さらには使用者の目線に立った“人に優しい”システムを提供するためには、サービスとしての“新たな価値”を生み出していくことが必要であり、それこそが、高齢化や過疎化といった根源的な問題を抱える日本社会において、MaaSに求められる最も重要な使命の一つといえる。

今後、地域や個人のニーズを踏まえ、いかに安全かつ効率的な交通サービスシステムを構築するか。そのためには、情報通信技術を駆使しながら、各種交通サービス、地方自治体、民間が一体となって、美しいハーモニーを奏でるオーケストラのように個々の機能を忌憚なく連動させ、新たなサービスモデルを創造していくことが不可欠となる。

最終稿となる次編では、日本の特徴的なサービスモデルも紹介しながら、MaaSと日本の未来についても展望していく。



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