これまでの報道によると、プーチン氏は侵攻2日で首都キエフを陥落させ、ゼレンスキー体制から親ロシア派の大統領にすげ替え、傀儡(かいらい)政権を樹立させるはずだった。計画通りに進めば、3月4日のパラリンピック開幕までには全ての軍事活動は終了しているはずだったのだ。
だが、プーチン氏にとっては想定外のウクライナ軍による激しい反撃により、パラ期間中も戦争が継続され、習氏の面子をつぶす結果となったのだ。
しかも、プーチン氏と「軍事面も含めて広い範囲で協力関係を深めていくこと」を確認したことで、ウクライナ侵攻が難航するロシアは、中国に軍事的・経済的援助を要請したとの情報を米国側がメディアにリークした。
この問題を含め、米中の外交担当者は今週、ローマで7時間にわたる協議を開いた。その中で米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は中国側に、「いかなる国もロシアの損失を埋めることは認めない」と伝えた。もし中国がロシアを支援した場合、「重大な結果を招く」と警告した。これは、米国が中国をロシアの協力国とみなし、ロシアに科した厳しい経済制裁と同様の措置をちらつかせ、牽制したものだ。
これに対し、中国側の外交担当トップの楊潔篪(ようけつち)共産党政治局員は「ロシアへの軍事支援について、米国はウソの情報を流し、中国をおとしめている」と反論した。いずれにせよ、西側の市場で成長してきた中国企業が経済制裁を恐れる中、習氏はロシアと米国の板挟みになり、ウクライナ情勢への表立った関与は困難な状況だ。
極めつけは習氏の政権継続に正面から反対する意向を示した中国共産党の長老・朱鎔基(しゅようき)元首相(93)だ。朱氏は1998~2003年の首相時代に市場経済化を加速した人物として知られ、習氏が国有企業の活動への後押しをする一方、民間企業には強い社会的影響力を持たせないよう統制を強める姿勢に疑問を呈したのだ。
中国では〝建国の父〟毛沢東が独裁政治を暴走させた結果、数千万人の餓死者を出した50年代後半の大躍進政策など、経済政策を失敗させて大惨事を招いた苦い経験がある。そのことから、鄧小平時代には集団指導体制が構築された。その歴史を無視し、権力集中に逆戻りするような習政権に、党の長老からは懸念する声が上がっている。
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