2022-03-18 経済

経済政策、コロナ、オリパラにウクライナ情勢 全て逆風で習近平主席の3期目続投に暗雲か

© Photo Credit: Reuters / 達志影像

中国共産党はこの秋、5年に1度の党大会を開く。通例なら10年でトップが交代する節目だが、習近平国家主席(68)は異例の3期目を目指す。昨年までは無敵に見えた習氏だが、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今週、「その権力基盤にかすかな亀裂の兆しがあることを露呈した」と報道。欧米メディアは、今年に入り急展開した世界情勢が、習氏にとって厳しい逆風になっていると分析した。

WSJ紙は、習氏が「IT大手から不動産デベロッパーにいたるまで、民間企業の締めつけを強化したため、中国経済は急激に失速した」と指摘。中国を西側資本主義から遠ざけようとした習氏の政策は、自国経済の先行きを不透明にしたと解説した。

また、ここにきて新型コロナウイルス感染の再拡大も新たな不安材料となっている。2019年末に武漢から広がったパンデミックを強権的な手法により、わずかひと月あまりで抑え込んだことは国内では一応の評価を受けた。ところが、ここにきて吉林省を中心に感染が再び爆発的に拡大。いまだ掲げる「ゼロコロナ」政策のもと、またもや大規模なロックダウン(都市閉鎖)に踏み切ったのだ。その結果、「個人消費と工場生産の双方に打撃を与えている」と同紙は伝えた。

さらに、習氏が政権と国威をかけて取り組んだ北京冬季オリンピック・パラリンピックも面子をつぶされる形となった。2008年の北京五輪では実務担当として手腕を振るった習氏は、今度は元首として大会に臨んだ。ところが直前になり、米国など西側数か国が新疆ウイグル自治区での人権問題をクローズアップし、中国を厳しく非難して「外交的ボイコット」したのだ。

五輪開幕日の2月4日には、国家ぐるみのドーピング違反でIOC(国際オリンピック委員会)から国としての参加を認められていないロシアのプーチン大統領が、開会式に出席するためという理由で訪中。同日、習氏とプーチン氏はウクライナ情勢などを協議し、両者はNATO(北大西洋条約機構)のさらなる拡大に反対するとした共同声明を発表した。

この時点でウクライナ侵攻を決めていたとされるプーチン氏の思惑通り、「両国の友好関係に限りはなく、協力関係の分野で〝禁じられた〟ものはない」として、軍事面も含めて広い範囲で協力関係を深めていくことを確認したのだ。

実際にこの時、習氏がウクライナ侵攻を知らされていたかは不明だが、少なくとも五輪期間中に軍事侵攻しないことは両者の間で〝暗黙の了解〟があったとされる。すると同月20日に五輪が閉幕した翌日、プーチン氏はウクライナ東部2州で親ロシア派武装勢力が〝建国〟した「ドネツク共和国」と「ルガンスク共和国」の独立を承認。そのわずか3日後にウクライナ侵攻を開始したのだ。

これまでの報道によると、プーチン氏は侵攻2日で首都キエフを陥落させ、ゼレンスキー体制から親ロシア派の大統領にすげ替え、傀儡(かいらい)政権を樹立させるはずだった。計画通りに進めば、3月4日のパラリンピック開幕までには全ての軍事活動は終了しているはずだったのだ。

だが、プーチン氏にとっては想定外のウクライナ軍による激しい反撃により、パラ期間中も戦争が継続され、習氏の面子をつぶす結果となったのだ。

しかも、プーチン氏と「軍事面も含めて広い範囲で協力関係を深めていくこと」を確認したことで、ウクライナ侵攻が難航するロシアは、中国に軍事的・経済的援助を要請したとの情報を米国側がメディアにリークした。

この問題を含め、米中の外交担当者は今週、ローマで7時間にわたる協議を開いた。その中で米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は中国側に、「いかなる国もロシアの損失を埋めることは認めない」と伝えた。もし中国がロシアを支援した場合、「重大な結果を招く」と警告した。これは、米国が中国をロシアの協力国とみなし、ロシアに科した厳しい経済制裁と同様の措置をちらつかせ、牽制したものだ。

これに対し、中国側の外交担当トップの楊潔篪(ようけつち)共産党政治局員は「ロシアへの軍事支援について、米国はウソの情報を流し、中国をおとしめている」と反論した。いずれにせよ、西側の市場で成長してきた中国企業が経済制裁を恐れる中、習氏はロシアと米国の板挟みになり、ウクライナ情勢への表立った関与は困難な状況だ。

極めつけは習氏の政権継続に正面から反対する意向を示した中国共産党の長老・朱鎔基(しゅようき)元首相(93)だ。朱氏は1998~2003年の首相時代に市場経済化を加速した人物として知られ、習氏が国有企業の活動への後押しをする一方、民間企業には強い社会的影響力を持たせないよう統制を強める姿勢に疑問を呈したのだ。

中国では〝建国の父〟毛沢東が独裁政治を暴走させた結果、数千万人の餓死者を出した50年代後半の大躍進政策など、経済政策を失敗させて大惨事を招いた苦い経験がある。そのことから、鄧小平時代には集団指導体制が構築された。その歴史を無視し、権力集中に逆戻りするような習政権に、党の長老からは懸念する声が上がっている。

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