中国共産党はこの秋、5年に1度の党大会を開く。通例なら10年でトップが交代する節目だが、習近平国家主席(68)は異例の3期目を目指す。昨年までは無敵に見えた習氏だが、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今週、「その権力基盤にかすかな亀裂の兆しがあることを露呈した」と報道。欧米メディアは、今年に入り急展開した世界情勢が、習氏にとって厳しい逆風になっていると分析した。
WSJ紙は、習氏が「IT大手から不動産デベロッパーにいたるまで、民間企業の締めつけを強化したため、中国経済は急激に失速した」と指摘。中国を西側資本主義から遠ざけようとした習氏の政策は、自国経済の先行きを不透明にしたと解説した。
また、ここにきて新型コロナウイルス感染の再拡大も新たな不安材料となっている。2019年末に武漢から広がったパンデミックを強権的な手法により、わずかひと月あまりで抑え込んだことは国内では一応の評価を受けた。ところが、ここにきて吉林省を中心に感染が再び爆発的に拡大。いまだ掲げる「ゼロコロナ」政策のもと、またもや大規模なロックダウン(都市閉鎖)に踏み切ったのだ。その結果、「個人消費と工場生産の双方に打撃を与えている」と同紙は伝えた。
さらに、習氏が政権と国威をかけて取り組んだ北京冬季オリンピック・パラリンピックも面子をつぶされる形となった。2008年の北京五輪では実務担当として手腕を振るった習氏は、今度は元首として大会に臨んだ。ところが直前になり、米国など西側数か国が新疆ウイグル自治区での人権問題をクローズアップし、中国を厳しく非難して「外交的ボイコット」したのだ。
五輪開幕日の2月4日には、国家ぐるみのドーピング違反でIOC(国際オリンピック委員会)から国としての参加を認められていないロシアのプーチン大統領が、開会式に出席するためという理由で訪中。同日、習氏とプーチン氏はウクライナ情勢などを協議し、両者はNATO(北大西洋条約機構)のさらなる拡大に反対するとした共同声明を発表した。
この時点でウクライナ侵攻を決めていたとされるプーチン氏の思惑通り、「両国の友好関係に限りはなく、協力関係の分野で〝禁じられた〟ものはない」として、軍事面も含めて広い範囲で協力関係を深めていくことを確認したのだ。
実際にこの時、習氏がウクライナ侵攻を知らされていたかは不明だが、少なくとも五輪期間中に軍事侵攻しないことは両者の間で〝暗黙の了解〟があったとされる。すると同月20日に五輪が閉幕した翌日、プーチン氏はウクライナ東部2州で親ロシア派武装勢力が〝建国〟した「ドネツク共和国」と「ルガンスク共和国」の独立を承認。そのわずか3日後にウクライナ侵攻を開始したのだ。