山本容子&和田誠展『二人のシネマ』が、東京都中央区のギャルリー東京ユマニテで始まった。3月26日まで。

山本容子は銅版画家、画家として幅広い活動をする人気アーティスト。受賞歴も数多いが、2001年にはルイ・ヴィトンのアートプロジェクトを手がけたり、新宿3丁目駅のステンドグラスなど名だたるビルのエントランス壁画なども公共のスペースで見られる作品も多く制作している。

一方、2019年にこの世を去った和田誠は、イラストレーター、グラフィックデザイナーとして活躍。書籍の装丁も数知れず、また小泉今日子主演の映画『怪盗ルビイ』を監督するなど、こちらも多才なアーティストである。
1990年台に交流を得た二人は、和田が愛猫の絵本『ねこのシジミ』の表紙制作のため、山本に銅版画の手解きを受けたことに始まった。1998年、二人は初めてのコラボレーション作品を油彩で描いた。
山本は言う。
「和田さんにとっては初めての油絵でしたが、流石でしたね。100号大(1121×1818cm)の大きなキャンバスにどちらかがまず描き、隙間を大事にしながらまたどちらかが描いていく。シュールレアリズムの共作のルールとして、お互いの絵に上からは重ねて描かないということだけは守りながら。でも一つの映画に対する想いを二人が描いていく作業はとてもエキサイティングでした」
作業は山本のアトリエで、10日間にわたって行われた。それをスタッフがカメラに収めた。映像を編集するのは大変な作業だったようだ。
この映像をまとめたものを、同展では地下1階で観ることができる。

ほとんど無言で、線を描き、色を塗る。大きなキャンバスに、映画の登場人物が一人、また一人と現れ、表情を持ち始める。背景や小道具に、物語の印象的なシーンを彷彿とさせるものが描かれていく。
途中、小さなテーブルで二人が食事するシーンも映る。
「アトリエの裏にキッチンがあって、そこでご飯を作っていたのよ。とにかく時間がないから、あとはひたすら描き続けていましたね」
と、懐かしそうに山本が語る。

『天井桟敷の人々』、『ゴッドファーザー』、『スターウォーズ』『アラビアのロレンス』。まず、地下でこの小さな映画を観て、1階にあるギャラリーで絵を観ると、絵の表情がさらに生き生きと目に映る。それは先程そこで描かれたかのように。
場内には、和田がチャールズ・チャップリンを描いたエッチングなどもさりげなく展示されている。和田らしいどこかコミカルでシンプルなのに表情のある絵が楽しい。