2021-11-30 ライフ

鰹のタタキはそんなにおいしい? 土佐の酒豪たちの最高の酒のつまみになった理由とは…

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注目ポイント

「初鰹は女房を質に入れても食え」。江戸時代、鰹は非常に高価な高級魚であり、江戸の男性は初鰹を食べるためなら妻を質に入れるというとんでもない話がある。もちろんジョークだが、江戸時代、鰹はとても貴重な魚だったことがわかる。しかし、私が夢中になったのは、一般の刺身とは違う「鰹のタタキ」(鰹を軽く炙って切り分けたもの)だ。

鰹王国土佐の伝統技法「一本釣り」

江戸時代の土佐藩、今の高知県は四国地方にあり、南は太平洋に面している。暖流の黒潮が周辺海域を流れているため、鰹の漁獲量と消費量が共に日本一で、鰹王国と呼ばれている。

 

春と秋が鰹のシーズンだが、二つの時期の鰹は味が大きく異なり、春に北上してくる鰹は「初鰹」と呼ばれ、脂が少なくあっさりしているが、秋に南下してくる鰹は「戻り鰹」と呼ばれ、低温の海水によって脂がたっぷり乗っている。

 

そして、鰹王国土佐の伝統技法「一本釣り」が、高知の鰹の知名度をさらに確固たるものに押し上げた。「一本釣り」とは、漁網を使わず一本の釣竿だけで鰹を釣る技法のことである。漁船は鰹の群れの位置を探し当てると、餌を撒いて群れが近づくのを待ち、疑似餌をつけた釣竿だけで鰹を一匹ずつ釣り上げる。鰹を釣り上げ、後方へと振り落とす瞬間、鰹は自動的に針から外れ、すぐまた次の鰹を釣るのである。ベテランの漁師は3秒に一匹釣り上げるという。

 

漁網を使って捕ると、網の中で鰹が暴れ飛び跳ねるため、柔らかい魚体を傷つけてしまう。一本釣りの目的は魚体を傷つけず、良好な肉質を保つための方法なのである。同じ大きさと鮮度でも、「一本釣り」で釣った鰹の方が高価。刺身やタタキなど高級料理のほとんどは「一本釣り」の鰹のみを使っている。

 

土佐名物-「鰹のタタキ」

鰹王国の高知で最も有名な鰹料理が「タタキ」である。鰹の表皮だけを炙って、脂がたっぷり乗った赤身の状態を保ち、ネギ、ニンニク、ショウガのみじん切りをたっぷり乗せて一緒にいただく。柔らかな魚の身を口に入れると、炙った稲藁の香りが広がる。日本酒の肴にぴったりな、江戸の男たちが夢にまで見たご馳走だ。

 

鰹のタタキの由来は、江戸時代の漁船に冷蔵・冷凍設備がなく、外海で捕えた鰹が市場で販売されるまでに早くて2日もかかることから、刺身好きの江戸っ子がよく食中毒を起こしてしまい、幕府が刺身を禁止したことが発端となっている。

 

刺身の美味さを諦めきれない町人たちは、やむなく魚の皮を炙って幕府の役人の目を欺く方法を思いついた。こうして皮だけを炙った鰹料理ができたというわけだ。

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しかし、実は昔ながらの鰹のタタキの作り方は非常に手間がかかるものだ。新鮮な鰹から鱗と骨を取り去り、鉄串を刺すと、半焼けの稲藁の上で燻して魚の身に香りを染み込ませる。次にいったいなぜ木ではなく稲藁を使うのか?稲藁はわずかに油分を含んでおり、着火した瞬間の火力が強いため、短時間で高温調理することが可能なのである。

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