2022-03-15 政治・国際

米国にいる時は米国人、中国にいる時は中国人…北京冬季五輪の金メダリスト・谷愛凌の国籍論争

© REUTERS/TPG Images

注目ポイント

谷愛凌(グー・アイリーン)は、女性アスリートの規範としてのイメージを確立しようとしたが、中国高官から性的暴行を受けたと噂されたテニス選手の彭帥(ホウスイ)のために多くのアスリート、特に女性アスリートが声をあげた時に、谷の姿はそこにはなかった。また、中国人アスリートとしての道を選んだアメリカ生まれの谷が、いつまでこのデリケートな話題に触れずにいるのか、世間は疑問視している。

 

谷はオリンピック選手であり、スタンフォード大学の英才教育を受け、IMGのスーパーモデルでもある。SNS上で有名人となり、中国とアメリカのメディアから引っ張りだことなった。しかし、今年のオリンピックで金メダル候補となったことだけでなく「アメリカを捨てて中国へ」という決断、また彼女はアメリカ人なのか?中国人なのか?と注目が集まっている。

2月8日に行われた北京冬季オリンピックの女子フリースタイルスキー・ビッグエア決勝で、中国代表の元アメリカ代表スキーヤー谷が、中国にとって3個目となる金メダルを獲得した。

レース後の記者会見で、「アメリカを捨てて中国へ」という決断に対するネット上の批判にどう対応するのかという質問にこう答えた。「自分はただの18歳の女の子で、人生を楽しんでいるし、誰かに気に入られようとは思っていない」と。

谷はこうも話している。「まず、私は18歳の女子で子供です。ただの普通の人間です。皆に好かれようとは思っていないし、私は18歳の女の子として、この瞬間の人生を楽しんでいます」。また、「私は教養のない人や私が経験してきた幸せや感謝や愛を経験しえない人達をなだめるために、時間を無駄にすることはありません」。

一方で、「私を信じない人、嫌いな人、それらは彼らの損失です。彼らは永遠にオリンピックのメダルを取ることはできないでしょう」とも。


考え抜かれたキャラクター設定

試合前、この若い中国とアメリカのハーフアスリートは、SNS上で議論を巻き起こしていた。2003年、谷はサンフランシスコで生まれた。アスリートであると同時に、スタンフォード大学への入学を希望して(1600満点のSAT上で1580点の実力)、国際モデル事務所IMGと契約し、スポーツとファッションの2つの世界で活躍している。

3歳でスキーに出会った谷は、9歳でアメリカのジュニアスキー選手権、15歳でイタリアのスロープスタイル・ワールドカップで優勝し、当時のアメリカのスキー界の期待の星となった。

この期間、谷はアメリカ人として競技を行ってきたが、2019年6月に驚くべき意思を表明した。22年の北京冬季オリンピックに中国代表として出場し、ビッグエア、スキースロープスタイル、スキーハーフパイプの3種目で金メダルを目指すと発表し、米中のスキー界に大きな衝撃を与えた。


結果的に国籍は謎のまま

谷の母親は中国人、父親はアメリカ人とされている。だが、父親に関する公的記録は見つからず、谷自身も父親について話すことを拒否している。アメリカ生まれだが、毎年夏には母親と共に北京に戻り、流暢な中国語が話せることから、中国のネットユーザーからは、「カエル姫」「雪の女王」と呼ばれ、親しまれている。

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