2022-03-11

自然保護に関する最新研究の衝撃的結果 犬の散歩が生態系を破壊するメカニズム

© REUTERS/TPG Images

注目ポイント

犬の排泄物が自然保護区に大量に堆積し、野生生物にとって有害な影響をもたらしていることが、最新の研究によって明らかになった。分析の結果、道路の両側の土壌には、犬のフンによる窒素やリンが過負荷になるほど含まれているということが分かったのだ。


ベルギーのゲント郊外の自然保護区にて、専門家たちは18か月の歳月をかけ、散歩する犬の数を数え、この結論を導き出した。専門家らが言うには、ヨーロッパ全体の犬の総数は約8700万匹で、どこも似たような状況だという。


研究によると、家庭でエサを食べた飼い犬が散歩で排泄すると1ヘクタールあたり年間平均11Kgの窒素と、5Kgのリンを堆積させるという結果が出た。その影響は農業、工業、交通の排気ガスによる大気汚染と同等レベルであり少なくない。


ほとんどの飼い主達がペットの排泄物を自然の中に放置しても害はないと思っている。しかし、ほとんどの生態系は元来、栄養価の低い環境の中で成り立っており、過剰な施肥は、イラクサやホグウィードなど他の植物を押しのけて成長することを助長し、そのため他の植物を食糧としている野性生物に影響を与えてしまうのだ。


この研究を主導したゲント大学のピーター・デ・フレンネ教授は、次のように述べている。「土壌に窒素が多すぎると、一部の生命力の強い植物しか生きていけなくなる。これらの植物は、環境を支配し他の植物を殺してしまう。蘭はまさにその典型であり、生態系から排除されてしまうのだ」。また「そもそも、犬の栄養摂取量には驚かされた。農業、工業、交通による大気汚染は政策的にも注目されているが、この分野において犬の存在は完全に見落とされている」とも話している。


研究者たちによると、リードに繋がれた犬は道の両側2メートルしか移動せず、その状況下において排出される窒素とリンの濃度はかなり高いものであるという。


一方でフレンネ教授は「多くの自然保護区では、植物や動物の生物多様性を高めるために、公園の管理によって土壌の栄養レベルが下げられている。これは、草刈りや干し草の除去からも可能だ。今回の結果は現在、自然保護区で放置されている犬から排出された栄養素が、自然環境の回復を遅らせている可能性を示唆するものである」と説明している。


また、「当然、犬とその飼い主にとっては大自然の中で散歩することは心身ともにメリットも多い。しかし、一方であげられるデメリットとは彼らが大量の栄養素を運んでくることだ」と言うフレンネ教授は、犬の飼い方は西ヨーロッパの多くの国で非常に似ているため、他の場所もゲントとはそんなに差異がないと考えている。


イギリスの慈善団体プラントライフは、窒素汚染について警告している。「野生の植物、地衣類、菌類にとって最大の脅威の一つであるにも関わらず、その対策はほとんど取られていない」と危惧している。


これらの研究は学術雑誌「Ecological Solutions and Evidence 」に掲載され、自然保護区を500回訪れ、1日24時間、1週間で1600匹以上の犬からデータをとり、それをもとに犬が排泄した窒素とリンの既知量と合わせて堆積した総栄養素を算出したものだ。


専門家たちは、犬がリードに繋がれているかどうかも記録していた。舗装道路に堆積した窒素は年間1ヘクタールあたり126Kg、自然保護区内の他の場所に散在した窒素は年間1ヘクタールあたり4Kgである。もし、全ての犬がリードに繋がれていた場合、舗装道路の端では窒素が年間1ヘクタールあたり175Kg、リンが年間1ヘクタールあたり73Kgまで上昇することになる。


しかしながら、もし犬のフンを拾って持ち帰れば、リンはほとんど残らず、一方で窒素の多くは尿に含まれるので窒素は半分しか除去されない。フレンネ教授は「当然のことながら尿は持ち帰るのが難しい。これまでの調査で、犬の散歩が禁止されてから3年経った場所でも、土壌には高い栄養分が残っていたことが分かっている」と語っている。


また、フレンネ教授はこうも話す。「まず重要なのは、飼い主にこの肥料がもたらす影響を知ってもらうことである。犬のフンだけを拾っている人も多いのではないか」。それでも尿はまだ残っている。生物学的に敏感な自然保護区では、犬を禁ずることも検討すべきであり、このような禁止令は鳥類などの野生動物を保護するために実施されているところもある。


イギリスの慈善信託組織ワイルドライフトラストの景観修復担当のロブ・ストーンマン氏は「自然保護区は自然が保たれ、野生動物やもろい生息地が保護されている特別な場所である。フンは元来、自然の一部ではあるが、犬のフンには脆弱な生態系を破壊する可能性のある栄養分が含まれている。どこで散歩をさせても、みんなが楽しめる大自然を守り続けるために、フンを持ち帰り処理することが重要である」と話す。


フレンネ教授は、研究の次なる段階として土壌の分析、推定値の今後の推移、犬だけでなく飼い猫への分析拡大が考えられるとしている。

 

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原文作者:Yi-ching Kuai
原文責任編集者:羅元祺
原文校閲者:翁世航
翻訳者:黄群儒
校閱者:TNLJ編集部