英国で行われていた先進7か国(G7)外相会合が12日、ロシアによるウクライナ侵略阻止に向けた共同声明や、中国の「威圧的な経済政策」に懸念を表明する議長声明を表明して閉幕した。そんな中、韓国の文在寅大統領は同日、オーストラリアの首都キャンベラに到着し、4日間の国賓訪問をスタートさせた。
文氏の狙いはスコット・モリソン豪首相や財界関係者らと会談し、オーストラリアから豊富なレアアースや天然資源の安定的供給を取り付けることだが、外交関係者らはこの訪問が中国を刺激することになると懸念している。
豪紙シドニー・モーニング・ヘラルドによると、文氏は韓国が米国主導による日本、米国、オーストラリア、インドの4か国(クワッド)の枠組みから孤立することをおそれ、今回の豪訪問中に米国との今後の関係強化を強調するとみられるという。
クワッドは“対中国包囲網”としてだけではなく、経済協力から新型コロナウイルスのワクチン分配、インフラ投資にいたるまで多岐にわたる分野での関係を強化し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現を目指す。
一方、韓国は中国の威圧的外交に対し、日本と比べてもより慎重な対応を取らざるを得ない立場だとし、これは北朝鮮との和平交渉を中国に依存しているためだと同紙は指摘する。
来年2月に迫った北京冬季五輪・パラリンピックを米国、英国、オーストラリア、カナダなどが新疆ウイグル自治区での人権侵害を理由に政府関係者を派遣しない「外交的ボイコット」を表明。これに対し韓国は先週、「ボイコットを検討していない」ことを明らかにした。米国などの決定とは一線を画した韓国に、中国外交部は「高く評価する」との談話を発表している。
だが今回、中国と対立するオーストラリアを訪問中の文氏が、より踏み込んだ二国間の経済協力で合意し、米国との関係を強化することを表明すれば、中国から反発を招くことは必至と外交関係者はみている。
韓国の聯合ニュースによると、韓国青瓦台(大統領府)は「今回の訪問は原材料と主要鉱物の供給網を安定化するきっかけになる」とし、オーストラリアはレアアースのほか、リチウムやニッケルなど天然資源も豊富で、協力を強化する必要があると説明した。
聯合ニュースはまた、青瓦台関係者が「オーストラリアと中国はいずれもわれわれにとって重要な国」と位置付け、「両国と友好的な関係を維持するため、多方面で努力している」と述べたと報じた。
文氏はモリソン首相と会談した後、財界関係者らと面会し、サプライチェーンの安定的な構築に向けた協力について話し合う。帰国は15日の予定だ。