2022-03-08 経済

経済制裁でロシアから西側IT大手が総撤退 残る中国企業に〝漁夫の利〟ありそうだが…

© Photo Credit: Reuters / 達志影像

ロシアのウクライナ侵攻を受け、西側のIT大手が露市場から一斉に撤退する中、現地に残る中国企業にとっては〝漁夫の利〟になるとみられるが、「戦時下でマーケットシェアを独占するのは、思うほど容易ではない」とウォール・ストリート・ジャーナルが伝えた。

米国など西側諸国がロシアへの広域にわたる経済制裁を打ち出したことで、アップルやサムスン電子、HP(ヒューレット・パッカード)、マイクロソフト、デル・テクノロジーズ、エリクソンなど世界のIT業界をリードする企業もロシアでの製品販売を停止すると発表したのだ。

一方、中国のIT大手は沈黙を続け、撤退する気配はない。ここ数十年でロシアとのつながりを強めたこれら中国企業は、ロシアのIT市場で40%以上のシェアを持つまでになった。

同紙によると、人口1億4400万人のロシア市場はスマートフォンとPCで世界の2%と比較的小さいが、それでも欧州では最大のスマホ市場で、西側ブランドと中国の企業とのし烈なIT競争が繰り広げられている。

中国の総合家電メーカー、シャオミはロシアのスマホ市場でサムスンに続いて2位。続いてアイフォンのアップルが3位となっている。また、PC市場はHPが1位で、香港のレノボが2位。通信機器ではトップの中国最大手ファーウェイと、エリクソンが5Gをめぐり激しいシェア争いをしている。

ところが、プーチン大統領の軍がウクライナを侵略したことで、米国を始め欧州連合(EU)各国は、ロシアとその同盟国であるベラルーシに厳しい経済制裁を科し、その中には米国製の機器やソフトウェア、設計を使って製造された外国製品なども含むなど、複雑な輸出規制が敷かれた。

そのため、西側企業は続々とロシアからの撤退を決定。アップルが3日、全ての製品の販売を停止することを発表すると、マイクロソフトも翌日、それに続いた。同社のブラッド・スミス社長は同社のブログで、「世界中の人々と同様、われわれはウクライナでの戦争の写真やニュースに恐怖と怒り、悲しみを覚えている。ロシアによるこの不当かつ不正、不法な侵攻を非難する」とのメッセージを発信した。

西側のブランド企業が撤退したことで空いた大きな穴は、残る中国メーカーにとってはまさに〝漁夫の利〟。だが、市場アナリストらは、「そう簡単ではない」と断言する。

香港拠点のグローバル市場調査会社、カウンターポイント・リサーチのアナリストは、「大きな空き」だとしながらも、今後、中国企業がロシアで売り上げを伸ばすには多くのハードルをクリアする必要に迫られると分析している。

そのハードルとはロシアで起きるだろう物流の混乱や、経済制裁により国際決算システム(SWIFT)から排除されたため、複雑化する決算方法、それに加え転換期に米国など西側による複雑な輸出規制に巻き込まれるリスクもあるとしている。

「中国企業も当然、未払いの請求書や物流システムの大きな問題には直面したくはないし、間接的であっても制裁や制裁対象の企業や個人には関わりたくはない。しかも制裁リストは今後も増え続けるだろう」と中国の投資顧問会社、BDAチャイナのダンカン・クラーク会長は明かした。

つまり、中国企業の活動が西側の経済制裁に抵触してしまうと、「得るものより失うもののほうが大きい」というのだ。その典型例が2020年に米国政府から制裁を受け、西側市場から制限されたファーウェイだ。

別の中国の市場調査会社、ガベカルドラゴノミックスは最新の報告書で、「中国企業にとって先進国の市場から締め出されたり、制裁を受けるリスクを考えると、ロシア市場は小さすぎる」と結論付けた。

 

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