ロシアが隣国ウクライナとの国境近くに、10万人近い兵力を集結されていることから、両国間で日に日に緊張が高まっている。7日には米ロ首脳による緊急オンライン会談が行われ、バイデン米大統領はロシアのプーチン大統領に「もしウクライナを侵攻すれば強力な対抗措置を発動する」と警告した。
米紙ワシントン・ポストによると、急きょ訪米したウクライナのレズニコフ国防相はロシアの一連の動きについて、プーチン氏は兵力をウクライナ国境に動かし、西側陣営を相手に「チェスをしているようだ」と表現。米国や欧州諸国はクレムリンに対し、新たな侵攻には高い代償を払わせると訴えた。
レズニコフ氏は「プーチン氏はEU(欧州連合)の団結、NATO(北大西洋条約機構)加盟国の団結、われわれウクライナ人社会、ポーランド、バルト3国の団結を試している」と語った。オースティン米国防長官と会談した同氏は軍事支援の追加を求めた。
また、米CNNによると、レズニコフ氏はロシアがここ数週間でウクライナ国境近くに兵員約9万5000人を配置していると説明。米国側はもしロシアが侵攻した場合、兵員17万5000人を動員するとみているが、ウクライナ軍の戦闘熟練度を考慮すると、ロシアにとってその動員数では足りない可能性も示唆した。
ではなぜ、今またウクライナ侵攻の危機なのか。
米ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)によると、プーチン氏は西側諸国に対し、NATOへのウクライナ加盟の可能性を排除し、これ以上同軍事条約を拡大しないよう強く求めている。
そもそもNATOは第2次大戦後に始まった東西冷戦の欧州における西側の軍事条約として1949年に創設。冷戦後は旧ソ連のエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国や、ポーランド、チェコ、ハンガリーなど旧東欧諸国も含め、現在は30か国が加盟している。
多くの旧ソ連の国々や旧東欧諸国が西側との関係を深める中、ロシア寄りの政策を進めてきたウクライナのヤヌコーヴィチ大統領(当時)は2013年、モスクワからの圧力もあり、EUと仮調印した政治・貿易協定の正式調印を見送った。それにより国内では大規模な反政府デモが勃発し、騒乱状態の中、同大統領はロシアに亡命した。
この騒乱に乗じ、ロシアは軍を投入し、ウクライナ南部のクリミア半島を併合。その後もロシアと国境を接するウクライナ東部ドンバス地方で起きた分離独立を求める親ロ・反政府勢力によるウクライナ軍との紛争をクレムリンは現在も軍事支援しているとされる。