旧ソビエト連邦の再建を目論むとされるロシアのプーチン大統領。ウクライナ全土を制圧して現政権を排除し、ロシアの傀儡(かいらい)政権を樹立するのが狙いとみられるが、果たして軍事侵略の〝第2章〟はあるのか。ウクライナの西に位置する小国・モルドバは「明日は我が身」ととらえている。
在米モルドバ大使館のオイゲン・カラシュ大使は今週、米FOXニュースとのインタビューで、万一、ロシアやその同盟国ベラルーシの軍が侵攻して来た際に備え、国境の防衛を強化していると語った。
大きなきっかけとなったのは、1日にベラルーシのルカシェンコ大統領が開いた安全保障会議。政府幹部を前に大統領は、東欧の地図を棒で示しながら何かを指示する映像が公開された。地図にはロシア軍によるウクライナ侵攻の複数のルートがピンク色の矢印で示されていた。その中のルートの一つが、黒海に面したウクライナ南部オデッサからモルドバに伸びていたのだ。
英大衆紙サンはこれに注目し、「ベラルーシの独裁者(ルカシェンコ氏)はプーチンのウクライナ侵攻ルートを説明する際、モルドバ侵攻もあることをつい明かしてしまったのだろうか」との疑念を投げかけた。
モルドバはウクライナとルーマニアに挟まれた人口約400万人の国で、旧ソ連の構成国だった。2年前には親欧米派のマイア・サンドゥ大統領が誕生した。だが、軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)に加盟していないことから、もしロシア軍が攻め入っても、ウクライナ同様、NATOの援軍派兵は困難になる。
カラシュ大使によると、モルドバ外務省は駐在するベラルーシ大使を呼び、問題の地図の意図について明確にするよう求めた。「ベラルーシ大使は自国の国防省側に間違いがあったと釈明したと聞いている」と述べた。
モルドバはロシアによる侵攻の可能性に警戒感を強めているが、パニック状態ではないとカラシュ大使は説明。「今後の進展について誰も100%の確信などない。われわれが次のターゲットになるのか?今は違うようだが、1週間後に何が起きるかはわからない。非常に心配している」と続けた。
モルドバの憲法は「中立維持」という条項があるため、NATO加盟申請は計画していないが、ウクライナで起きている戦争により、事情が変わる可能性をカラシュ大使は示唆した。
ウクライナ周辺のNATO非加盟国で、ロシアの脅威に直面しているのはモルドバだけではない。FOXニュースによると、ロシアはフィンランドとスウェーデンに対しても脅迫めいた発言をしている。