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2023-11-20 政治・国際

中国軍艦が音波照射、豪海軍ダイバー負傷 米誌「〝親中派〟豪首相は現実見えていない」

© REUTERS アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に出席したオーストラリアのアンソニー・アルバニーズ首相と中国の習近平国家主席=2023年11月17日

注目ポイント

オーストラリアのマールズ国防相は先週末、日本のEEZで潜水作業をしていた豪海軍のフリゲート艦に対し、中国海軍の駆逐艦が音波探知機(ソナー)を作動させる危険行為をしたとして「深刻な懸念」を表明。複数の潜水員が音波を浴びた影響とみられるけがを負った。米誌「フォーブス」は「中国との関係改善を図った親中派のアルバニージー首相は危険なほど脆く、現実が見えていないようだ」と批判した。

マールズ豪国防相は18日になって、中国の駆逐艦が14日、公海上を航行していた豪海軍のフリゲート艦に海底探査用の音波を照射し、隊員らが負傷したと発表。ソナー作動を「危険で未熟な行動だ」と批判し、中国政府に抗議した。

フォーブス誌は、「オーストラリア政府はこのような危機に正面から向き合うのではなく、この一件を隠ぺいしようとして、結果的に成果のあったはずのアルバニージー氏の〝外遊〟は危険なほど脆く、現実が見えていないようだ」と酷評した。

アルバニージー氏は今月6日、首相として7年ぶりに中国を訪問し、習近平国家主席と会談。中国との「強力な関係」が利益につながるとし、習氏を自国に招待するなど、冷え切った2国間関係の和解に努めた。だが、専門家らは、今回の一件が、同首相の訪中で進展がみられた友好ムードや両国関係の改善に水を差す可能性があると指摘する。

豪政府の発表によると、フリゲート艦「HMASトゥーンバ」は14日、北朝鮮に対する国連制裁の監視活動のため任務を遂行中で、寄港の準備のため航行を一時停止し、潜水員がプロペラに絡まった漁網を取り除く作業をしていた。豪政府は、これが「偶発的な出来事ではなかったことを強く示唆している」と主張した。

同誌によると、ダイバーにとって軍用ソナーの照射をうけることは非常に危険で、難聴、内出血、死亡を引き起こす可能性さえあるという。

同艦は日本のEEZ(排他的経済水域)の公海で活動しており、通常の海洋ルールに従い、「潜水作戦を行う意図」を伝え、国際的に認められた信号を発信していた。ところが、近くの海域にいた中国海軍の駆逐艦「寧波(DDG-139)」が同艦に接近。オーストラリア側は中国艦に潜水作業をしていることを通知し、接近しないように告げたが、その後も接近を続けたという。

豪政府によると、中国の駆逐艦はその後すぐ、オーストラリアのダイバーの安全を脅かす音波の照射をしていることを確認したという。艦艇に上がったダイバーらは、音波照射による水中音のバーストによるものとみられる耳の負傷で治療を受けた。

この一件について在豪中国大使館はコメント要請に応じていない。

マールズ国防相は「オーストラリアは中国を含むすべての国が、専門的かつ安全な方法で軍を運営することを期待している」とし、豪政府はオーストラリア兵の安全と健康が「最優先事項」であると付け加えた。

7月にはソロモン諸島との安全保障関係を強化するなど、中国は近年、インド太平洋地域での権益の主張を強めている。今年初め、米国と同盟国であるオーストラリアは、中国の地域での影響力が増大する中、米軍と合同で3万人以上が参加する2週間にわたる軍事演習を実施した。

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