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アップル社が先日、政治風刺で人気の米コメディアン、ジョン・スチュワートの配信番組を突然終了したことについて、米下院が同社に説明を求めたことが今週明らかになった。打ち切りの背景に中国の圧力があったのではないかとの懸念を示している。
米紙ニューヨーク・タイムズは先月、アップル社はスチュワートの番組「The Problem With Jon Stewart」が、制作上の考え方の相違により終了することを決定したと報じた。スチュワートは制作スタッフに対し、番組で取り上げた中国と人工知能(AI)というトピックについて、アップル側から懸念を伝えてきたという。
同様に米CNNもスチュワートと話し合った複数の番組スタッフの話として、番組で取り上げた中国とAIに関する議論に懸念を示したアップル側から、スチュワートに接触があったと報じていた。
CNNによると、アップル側はスチュワートに対し、問題のテーマに関して両者の意見を一致させる必要があったと伝えたが、スチュワートはそれを拒否。かわりにアップル側に対し、番組の完全な裁量を要求した。その後、アップル側がスチュワートに番組終了をちらつかせると、スチュワートは自ら降板したという。
対中国共産党戦略的競争に関する米下院の特別委員会は今週、共和・民主超党派による書簡を公開。「もしこれらの報道が正しければ、中国共産党に関するテーマを取り上げることが、米国のアーティストや企業の創作表現へ間接的に影響を与え、より広範な懸念をもたらしている」と指摘。
「一般的な国家安全保障という概念を超えて、アップル社は自社の中核事業における(中国への)依存を減らす努力を加速するよう奨励する」とした。その上で、「企業には自社の配信サービスなどに、どのようなコンテンツが適しているかを決定する権利があるが、外国勢力の高圧的な戦術がこれらの決定に直接的または間接的に影響を与えるべきではない」と付け加えた。
書簡は特別委員会の委員長であるマイケル・ギャラガー下院議員(共和)と、委員であるラジャ・クリシュナムーティ下院議員(民主)によって署名され、アップル社のティム・クックCEO(最高経営責任者)宛てに送られた。
同委員会はアップル社に対し、来月15日までに懸念事項について説明するよう求め、スチュワート側にも事情を聴く予定だと記した。また、中国共産党や中国から批判的とみなされるコンテンツについても、躊躇(ちゅうちょ)することなく採用することを公約するようアップル社に要請するとしている。
この書簡は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)フォーラムに出席するため、習近平国家主席が6年半ぶりに訪米したタイミングで公開された。