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2023-11-16 政治・国際

与党優勢が急転直下 台湾・総統選で野党が候補一本化で合意、11月18日に決定【近藤伸二の一筆入魂】

© REUTERS 手を握り合う国民党主席の朱立倫氏(左端)、新北市長の侯友宜氏(左から2人目)、前総統の馬英九氏(同3人目)、民衆党主席の柯文哲氏(右端)=2023年11月15日、台北

注目ポイント

2024年1月に行われる台湾の総統選立候補者届け出が間近に迫る中、最大野党の中国国民党(国民党)と第3勢力の台湾民衆党(民衆党)は11月15日、候補を一本化することで基本合意した。世論調査の結果を専門家が分析し、18日に統一候補を決定する。これにより、与党・民主進歩党(民進党)がリードする選挙戦は互角の展開にもつれ込むとみられるが、急ごしらえの野党連合はさまざまな課題も抱えている。

平行線が急転直下

総統選には、民進党から頼清徳副総統(民進党主席)、国民党から侯友宜・新北市長、民衆党から柯文哲・前台北市長(民衆党主席)が出馬を表明。国民党の予備選で敗れた鴻海精密工業創業者の郭台銘氏も出馬に必要な数の署名を集めて提出し、無所属で参戦する構えを見せている。

国民党と民衆党の6項目の合意文書。国民党は侯友宜候補、朱立倫主席、馬英九前総統が、民衆党側は柯文哲候補が署名している。=2023年11月16日(TNLJP撮影・台湾政界関係者提供)

3候補が名乗りを上げる野党側は支持が分散し、これまでの世論調査では、与党の頼氏が一歩頭を抜ける情勢になっている。国民党と民衆党は共倒れになることを危惧し、10月中旬から一本化に向けて調整を続けてきた。

両党は協力態勢を築くことでは一致したものの、肝心の総統候補の決め方では、支持者による予備選実施を求める国民党と世論調査結果に従うべきだとする民衆党の主張がかみ合わず、平行線をたどってきた。

立候補届け出期間は11月20日から24日までで、タイムリミットが近づく中、仲介に乗り出したのが馬英九前総統だった。侯、柯両候補と朱立倫・国民党主席は11月15日、馬英九基金会の事務所で馬氏を交えた4人で協議し、候補一本化を受け入れる合意書に署名した。

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中国訪問を終え、桃園国際空港でメディアの取材に応じる馬英九前総統=2023年4月7日、桃園

合意内容によると、両党と馬氏が1人ずつ統計の専門家を推薦し、その3人が11月7日から17日にかけて行われる世論調査の結果を評価する。支持率が高いと判断された方が総統候補となり、もう一方は副総統候補に回る。もし、結果が誤差の範囲内であれば、国民党の侯氏が総統候補となる。総統選で勝利すれば、両党が連立政権を樹立する。

今後、両党は郭氏に立候補辞退を働き掛けるとみられる。郭氏は8月に出馬宣言した際、「非与党勢力の結集」を呼び掛けており、応じる可能性がある。そうなれば、与野党一騎打ちの構図が固まる。

 

キーパーソンは金溥聡氏

4候補の支持率は、ケーブルテレビ大手TVBSが10月24日に発表した世論調査結果では、頼氏33%、柯氏24%、侯氏22%、郭氏8%。民間シンクタンク、台湾民意基金会が同日発表した世論調査結果では、頼氏26.5%、柯氏21.7%、侯氏20.2%、郭氏12.4%。これに対し、美麗島電子報が11月15日に発表した最新の世論調査では、頼氏33.1%、侯氏26.5%、柯氏17.3%、郭氏5.0%で、侯氏が柯氏を上回る結果となっている。

両党の合意について、誤差の範囲内なら侯氏が総統候補になるなど、侯氏に有利と読めることから、台湾では「民衆党が譲歩した」との受け止め方が一般的だ。柯氏も合意を受け、「(1947年に国民党軍が台湾人を虐殺した)『2・28事件』の被害者の家族の1人として、国民党に憎しみを抱いてきた。今日、私の心は晴れない。だが、民進党がこんなに急速に堕落するとは思っていなかった。民進党にもっと憤りを感じている」(台湾『中央通信』11月15日)と苦しい胸の内を明かしている。

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