僕は2011年の冬に初めて台湾を訪れた。理由は一言では言えないが、そのときに台湾が好きになって、現在まで20回以上は行っていると思う。何度も行くうちに、台湾人の友達も増えて、特に、若者の友達が増えたのが、面白かった。彼らに連れられて、台北の最先端のスポットに行くのが何よりの楽しみだった。彼らは、バンドを組んでいたり、自分でZINEを作っていたり、絵を描いていたりと、何らかの表現活動をしている人たちだった。そこで、日本の若者と決定的に違うと思ったのが、「政治の話が大好き」だということだ。
日本の若者は、基本的に政治には興味がないし、もしあったとしても、政治について語ることは「ダサい」こととされているので、しない。それが、台湾にいたっては、映画や音楽、雑誌、文学の話をしていても、いつの間にか政治の話になっているのである。実に不思議だ。
例えば、台湾の有名なライブハウスの店長と台湾のインディー音楽事情について話していたときのことだ。どんな国のバンドに影響を受けているのかという話をしていたのに、いつの間にか、台湾のインディー音楽は、独立音楽と書いて、台湾独立という意味も込められているという話になり、ルーツは、国民党打倒の反権力的な音楽だったと聞かされた。そして今の台湾インディーシーンは、歌詞の政治色が薄まったとして、それはちょっとおかしいんじゃないか、と僕に同意を求めてきた。僕は何も言えなかった。日本では、音楽に政治を持ち込むなという意見がマジョリティとして、声高に叫ばれていた。この違いはいったい何なのか。結論から言うと、日本には、民主主義がない、あるけど形骸化している、アメリカからもらったものであって、自ら勝ち取ったものではないから、主体性が希薄なのだ。でも、そうもいってられない時代がやってきた。アメリカが、世界の警察をやめた今、日本も絶対安全ではない。でも、太平洋戦争のときみたいに集団ヒステリーを起こさず、絶えず、国家や政治家を冷静に見張ることが大切なのだと思う。
オススメ記事:
・連載「いちにの算数いーあるさんすー」 台湾ルネサンス時評:台湾の人たちは、日本の福島県産の食品を実際に食べられますか。
・連載「いちにの算数いーあるさんすー」 台湾ルネサンス時評:台湾人は村上春樹がお好き?
・連載「いちにの算数いーあるさんすー」 台湾ルネサンス時評:タピオカミルクティの次にくるものは?