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中国の習近平国家主席は15日午前(日本時間16日未明)、6年半ぶりに訪れた米国でバイデン大統領と会談した。両国は関係の安定化をはかることができるかが焦点になる。そんな中、米紙ニューヨーク・タイムズは、習氏が権力を掌握した初期、米国との共存を誓う一方、中国人民解放軍に対して米国との軍事衝突も辞さない姿勢を示していたと伝えた。
米中両首脳は15日、米サンフランシスコ近郊で会談し、幅広い分野で対立が深まった両国関係の緊張緩和を図った。バイデン大統領は「競争が衝突に転じないようにしなければならない」と表明。
習主席は、「この50年余り、中米関係は順風満帆ではなく紆余曲折(うよきょくせつ)の中で前に向かって発展してきた」とし、地球は十分に大きく、「中米両国を受け入れることができる。私は中米関係の将来は明るいとかたく信じている」と述べた。また、両国の関係は「世界で最も大事」だとし、立場の違いは乗り越えることができると強調した。
だが、米紙ニューヨーク・タイムズは両首脳の会談を前に今週、習氏が国家主席に就任した前後の時期から「中米関係の安定化を確信している」としながらも、そのウラでは軍事衝突に備えるよう中国人民解放軍に指示していたと報じた。
2015年に初めて米国を国賓訪問した際も、習氏は米中が対等な立場で平和的に共存する超大国の関係の「新たなモデル」について希望を込めて語った。だが、同紙によると、帰国後に習氏は軍との会談で、台頭する中国と、長年にわたり世界秩序を管理してきた米国との間の競争激化はほぼ避けられず、「人民解放軍は反撃に備える必要がある」と驚くほど厳しい言葉で警告したという。
習氏は中国の平和的台頭を主張しているが、共産主義・中国が追いつき、追い越すことを西側は受け入れないと確信し、「西側は中国の躍進を挫折させ、共産党打倒の試みを決してやめない」と軍幹部の前で演説した。同紙によると、このような習氏の発言をメディアはほとんど報じていない。
「疑いの余地はなく、わが国の力の増大が国際秩序の根本的な再調整を推進する最も重要な要因である」と習氏は訪米から2か月後の15年11月、軍の最高司令官ら幹部にそう述べている。
当時のオバマ米大統領に対し、南シナ海を軍事化しないと確約したにもかかわらず、習氏は、その翌年の16年2月、上級司令官らを前に、「中国は南シナ海でのプレゼンスを強化する必要がある」とし、「南シナ海の島々や浅瀬、海洋戦略における歴史的な躍進を達成し、海洋権益を守る」と明言。その後の数年間で、中国は実際、この地域の軍事インフラを急速に拡大した。
これらの発言は、人民解放軍や共産党幹部らに向けて行った演説の一部で、上級将校による内部研究のために軍がまとめた習氏の演説集「国防と軍事発展に関する習近平の主な発言」(12年から16年2月)に収められている。ニューヨーク・タイムズ紙はこの演説集を閲覧し、内容を確認したとしている。