2023-11-19 政治・国際

「キャベツ」は何と呼ぶ?伝統市場で思う台湾の複雑な歴史【梶山憲一の街歩き台湾】②

© 木新市場=台北(内海彰撮影)

注目ポイント

何気ない日常の光景のなかにも物語は潜んでいる。2泊3日の観光旅行ではあまり足を踏み入れる機会のない台湾地元住民の生活圏「菜市場」を歩いていると、台所の定番野菜であるキャベツが目に飛び込んできた。台湾の人々はこれを何の疑いもなく「高麗菜」と呼んでいるが、キャベツは朝鮮半島が原産地ではないはずだ。ではなぜ?…雑誌・書籍編集者として台湾でも活躍してきたベテランライターが、台湾の街角を散歩しつつ、台湾の素顔を紹介する。

台湾でも「高麗菜=キャベツ」は、人びとの生活に定着している。

台湾でキャベツが庶民にまで広まったのは、洋食が少しずつ浸透していった日本統治時代だといわれるが、最近の統計によれば、台湾でのキャベツ消費は、1人あたりで日本の2倍だとか。

こうして「高麗菜」は、オランダ時代を経た台湾の独自の歴史を物語り続けている。

台湾では今年9月、初の自主建造潜水艦「海鯤」の進水式を内外メディアに公開したが、台湾の海軍がこれまで運用してきた2隻の潜水艦はオランダから取得したものである。

また、こんにち自動運転など次世代技術の核心となる先端半導体の製造が、台湾積体電路製造(TSMC)とオランダの半導体製造装置大手ASMLの2社で独占されつつあり、しかもこの2社の関係が密接であることを思えば、日本統治以前の過去が現代の台湾にも影響を残していることを、キャベツの呼び名とあわせて感じられないだろうか。

 

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