注目ポイント
10月20日から23日まで、台北市の台北世界貿易中心(台北ワールドトレードセンター)で「2023 ART TAIPEI 台北国際芸術博覧会」が開催された。今年で30周年を迎えたアジアで最も長い歴史を誇るアートフェアは、例年以上に東南アジアのギャラリーの出展が目立ち、ギャラリーブース以外にも台湾の原住民(先住民)アーティストに光を当てる特別展示ブースや、伝統山水画・水墨画の特別展が展開されるなど、欧米中心からアジア、グローバルサウスへと移りつつある美術界の動きを顕著に反映したアートフェアとなった。
最終日に足を運んでも、相変わらず人でいっぱい、熱気あふれる「ART TAIPEI(アート・タイペイ)」。新型コロナウイルス・パンデミックのまっ最中だった2020年、2021年も世界で唯一リアルで開催されたこの台湾最大のアートフェアは、今年でちょうど30周年を迎えた。台湾のギャラリーが77軒、海外からのギャラリーが68軒の合計145軒のギャラリーが参加したほか、特別展示やレクチャーも行われ、過去最大規模だった。
台湾の「30年」というとき、台湾に関わる多くの人は少なからぬ感慨を抱くだろう。1987年に戒厳令が解除され、一党独裁体制から民主国家へと華麗なる転身を遂げた台湾。90年代よりうねるように巻き起こった様々な社会・民主化運動、そして921大地震、SARSパンデミック、台風モラコット、COVID-19パンデミックなどのカタストロフィを経て、高まる台湾アイデンティティ、ジェンダー意識、台中関係をはじめとする国際情勢の変化ーー。そうした意味で、台湾社会の変化を敏感に反映するアート状況について、コレクターを育てマーケットを拡大しながら支えてきたアート・タイペイは、これからの台湾のアートの流行を占う水晶玉のような存在でもある。今年のアート・タイペイでも特に印象深かったことを、3つほど紹介したい。

まず1つ目は、日本、韓国、そして特に東南アジアのギャラリーの出展が目立ったこと。
これはインドネシア・ジャカルタのアートコレクティブ「ルアンルパ」が、世界で最も影響力があるといわれる国際美術展「ドクメンタ15」で、アジア初の芸術監督になったことと無関係でないだろう。西洋美術史を作り上げてきた西洋中心主義から、軸足は今や、アジアやグローバルサウスと呼ばれる国々に移ってきている。今回は「ART JAKARTA」(2009年よりジャカルタで始まった『ハーパース・バザー・インドネシア』が主催するアートフェア)が選出したシンガポール、ベトナム、インドネシアのギャラリー5軒も出展。インドネシアのギャラリー・ArtSociatesのブースでは、インドネシアのアーティスト、エディ・スサント(Eddy Susanto)が、1925年の香港、1926年の北京、1945年の台北の古い地図を題材に日本の植民統治や地政学を絡めて歴史を俯瞰する新作を展示した。
日本からは小山登美夫ギャラリー、TEZUKAYAMA GALLERYなど積極的に海外アートフェアに出展している有名ギャラリーのほか、京都、福岡など日本各地のギャラリーも少なくなく、日本のアートメディア「Tokyo Art Beat」がオーガナイズするスペシャルレクチャーも催され、日台のアート動向に関する情報交換もなされた。