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福島第1原発からの処理水放出を中国が事実上の政治問題にしたことで、日中関係が一段と悪化するなか、日本の水産物を全面禁止にしたのに続き、今度は日本文化を象徴する〝泳ぐ宝石〟ニシキゴイの輸入を停止した。
中国がニシキゴイ輸入を事実上禁止したことに、日本政府は「輸出再開に向けて中国側に引き続き働きかける」と明言。だが関係者は、処理水放出や、南・東シナ海の領有権をめぐる緊張を背景に、日本への圧力の一環としてニシキゴイもヤリ玉の一つに挙げられた可能性を指摘している。
そもそもニシキゴイの輸出は、日中関係にどのような影響を及ぼすのか。ニシキゴイは新潟県発祥で200年以上の歴史を持ち、観賞魚として海外でも人気が高まっている。色合いが美しく、〝泳ぐ宝石〟と呼ばれるほど高価なものも多く、人生や商売の幸運を象徴するともいわれる縁起モノでもある。過去には1匹2億円で取り引きされた例もある。
近年、海外でのニシキゴイ人気の高まりで、日本からの輸出額は昨年、過去最高となるおよそ63億6000万円に達し、10年前から倍増した。そのうち5分の1が最大のニシキゴイ輸入国である中国で、次いで米国、インドネシアの順になっている。
2000年代にはコイヘルペスウイルスが大量発生したことを受け、日本政府はニシキゴイが感染していないことを確認するため、中国向けを含む全ての輸出用ニシキゴイに対して7~10日間の検疫を実施している。
当初、中国政府は日本にある15の施設を検疫施設として認証していたが、その数を徐々に減らし、新潟県にある施設1つのみとなっていた。その最後の施設も10月30日付で認証は期限切れとなり、11月からは中国向け輸出がストップしている。
新たな更新がない限り、中国では日本からのニシキゴイの輸入は事実上終了する。ニシキゴイの検疫を担当する日本の水産庁職員は、中国側は認証の更新に必要な措置を取らない理由について何の説明もしていないと述べた。
国際原子力機関(IAEA)、日本政府、福島第1原発の運営事業者である東京電力による調査で安全性が確認されたにもかかわらず、中国は処理水放出をし始めた直後の8月、日本産水産物の輸入を全面的に禁止した。だが、ニシキゴイは淡水魚のうえ観賞用であり、食用ではないため同職員は、処理水放出がニシキゴイの輸入停止の原因である可能性は低いとした上で、中国は処理水放出の開始後2か月間、ニシキゴイの輸入を許可していたことも指摘した。
中国外務省は9日の会見で、処理水放出との関連について質問され、「海洋放出に反対する中国の立場は一貫している」と述べるにとどまった。また、「中国は輸入禁止に関する通知や文書を発表していない」とした。