注目ポイント
オーストラリアの南極観測隊に、台湾人の謝伽欣さんが今月から料理人として参加し、42人分の食事を提供することになった。シーフードの盛り合わせやクロワッサン、台湾風焼きビーフンなど世界各地の料理が基地の食卓に並ぶ見込みだ。

(シドニー中央社)オーストラリアの南極観測隊に、台湾人の謝伽欣さんが今月から料理人として参加し、42人分の食事を提供することになった。シーフードの盛り合わせやクロワッサン、台湾風焼きビーフンなど世界各地の料理が基地の食卓に並ぶ見込みだ。中央社の取材に「私の役割は隊員が南極の環境で仕事に集中できるようにすること」と意気込んだ。
▽オーストラリアに留学し、料理の道に
バンガーヒルズと呼ばれる山にあるエッジワースデビッド基地はオーストラリアの南極観測計画で最も奥地にある基地の一つとされ、3年間運営される予定だ。謝さんによると、厨房(ちゅうぼう)は計画の終了後に解体される仮設のものだが、建設には2年の時間を要し、環境への影響を極力抑えたという。
オーストラリアが今回の観測隊員の募集を始めたのは2021年末。極地での数週間にわたる任務は体への負担が極めて大きいため、謝さんは8カ月にわたり心理テストや専門分野の審査、面談、身体検査などを受け、ようやく採用された。白人や男性が多い政府関連機関の中で、英語を母語としないアジア人女性は決して多くない。
謝さんは元々大学で環境保護や土地管理を学んでいたが、料理やヘルシーな食事が好きで、オーストラリアに留学。その後レストランでの勤務を経て、現地の医療機関や教育施設で大勢に食事を準備する仕事に携わった。
教育施設では、食べ物の栄養価を十分に確保する他に、特別食を求める子供への配慮も必要だった。レシピの研究を重ねた謝さんが作る料理は、おいしいだけでなく、気持ちや心のぬくもりも込められている。
▽限りある食材と設備でニーズに合った食事を届ける
バンガーヒルズの基地に着任後は、毎週450キロ離れたケーシー基地に必要な物資のリストを送らなければならない。厨房で使える水と電力には限りがあるため、野菜や肉類は先に下ごしらえしてもらった後、真空パックしたものを小型飛行機で届けてもらう。厨房には水道がない。氷を解かして水を得る。2つある120リットルの水をためられるタンクは、調理や食器洗いだけでなく入浴にも使う。
現在南極は白夜の時期だが、ひとたび天候が悪化すれば、食材の補給に影響が出るため、謝さんには臨機応変さを保たなければならない。また基地での食事以外に、隊員は数日間に及ぶ調査に出かけることがあり、綿密に計算した上で携帯に便利なフリーズドライ食品を渡す。「1週間外出するなら、2週間分の食料を用意する。多くすることしかできず、ぴったりにはできない」。