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フランスに続き、今度は韓国でトコジラミ(別名・南京虫)が大量発生し、政府は対策に乗り出した。新たに設置された政府合同対策本部などによると、7日時点で全国17の広域自治体が確認したトコジラミの疑いのある報告は30件で、半数以上が首都ソウルでのものだった。
韓国政府によると、トコジラミは仁川のサウナや大学の寮、「考試院」と呼ばれる韓国の簡易宿泊施設で相次いで発見され、9月には大邱市の啓明大学の寮でも集団発生が報告された。
1970年代には殺虫剤が全国の一般家庭にも普及し、トコジラミは根絶されたとみられていたが、今回はそれ以来、約半世紀ぶりの集団発生となった。韓国・疾病管理予防庁によると、ここ10年間でトコジラミが報告されたのはわずか9件だった。
トコジラミは吸血性で、サイズはリンゴの種ほどの大きさ。ほとんどは鳥類や哺乳類にとりつき、コウモリなどを宿主とする。だが、ベッドやソファの隙間などの暗い空間にも生息することがある。伝染病を媒介することはないが、刺されると激しいかゆみが伴い、二次的に皮膚感染症や瘢痕(はんこん=傷跡)を残す場合がある。ノミのように跳躍したり、空中を飛ぶことはできないが、衣服やバッグ、スーツケースなどに潜むことにより広がるという。
フランスでも9月~10月にラグビーW杯開催中にパリや地方都市でトコジラミがまん延。英BBCは来年の「夏季五輪を控えたパリを襲う〝トコジラミ・パニック〟」との見出しで、五輪での健康と安全に対する疑問が浮上していると報じた。
疾病管理予防庁のジ・ヨンミ所長は、「海外旅行中にトコジラミを確認した場合は、所持品を徹底的に消毒する必要がある」と警告。旅行者が共同宿泊施設を利用する場合は、トコジラミがいないか確認するようアドバイスした。
韓国政府は公衆浴場や学生寮、児童養護施設など、トコジラミが大量に発生しやすいと考えられる公共施設での検査を実施。今後4週間は害虫駆除期間として、トコジラミが生息している疑いのある、あらゆる施設は直ちに消毒する方針だ。
ただ、トコジラミとの戦いは簡単なものではなさそうだ。
ある当局者は、「世間ではトコジラミが個人に起因すると思われがちで、不衛生だから寄生されたとみられることを嫌い、報告を控える人もいる」と指摘。そのため正確な発生件数を把握することが困難だという。それでも報告数は増加するとみられる。また、トコジラミは既存の化学物質に対する耐性ができている可能性があり、疾病管理予防庁は新たな殺虫剤の開発を検討している。
一方、韓国の旅行業界もトコジラミ撲滅に力を入れている。
米CNBCニュースによると、韓国空港公社は、国内の空港全体でターミナルラウンジ、子供の遊び場、空港の手荷物検査場などのエリアで、検査頻度を週1回から2回に増やすと発表。ホテルも消毒の義務を含む衛生基準を遵守しているかどうか徹底して検査される。