開票日カウントダウン

選挙ページへ

2023-11-09 政治・国際

英下院国防委員会の最新報告書:英政府の「インド太平洋戦略」は曖昧、中国の脅威への対処が不十分と指摘

© Photo Credit: GettyImages

注目ポイント

最新の『英国国防とインド太平洋地域に関する報告書』は、「英国の国防はインド太平洋に傾斜するという目標の達成には程遠い」と指摘している。報告書はまた、イギリスと中国の航空・海軍能力を分析し、中国の航空・海軍部隊はすでに「インド太平洋地域最大の空軍」となったとし、空対空ミサイルなど一部の分野では、中国が英国の軍事能力を上回っていると言及した。

 英国議会の下院国防委員会は、このほどインド太平洋地域に関する最新報告書を発表し、今後数年間に台湾海峡で紛争が発生する可能性があるが、英国政府はインド太平洋地域に対する明確な戦略を持っておらず、英国軍は同地域で戦うための十分な兵力を有していないと指摘した。専門家らは、ウクライナの戦争が未だ収束しないうちに、続けて中東紛争が起こったことが、英米両政府の資源配分に影響を与え、インド太平洋地域において中国に対抗する力が弱まるのではないかと懸念している。

 英国政府は、2021年に外交政策報告書を発表し、その戦略的重点をインド太平洋地域に移すことを明らかにした。下院国防委員会は、2022年1月から英政府の「インド太平洋への傾斜」政策の有効性を検証するための調査を開始し、今月結果を公表した。その報告書である『英国国防とインド太平洋地域』は、「英国の防衛力は、インド太平洋への傾斜という目標の達成には程遠い」と指摘している。

 報告書によれば、インド太平洋地域における英国の軍事的プレゼンスは、他の同盟国に比べてまだ限定的であり、英国は定期的な活動をほとんど行っていない。英国がインド太平洋地域で重要な役割を果たすためには、資金、装備、人員を投入する必要があるが、それができない場合、英国は同地域での野心を抑制する必要があるだろう。

報告書によると、英国がインド太平洋に展開する軍事施設は、ブルネイ駐屯地、インド洋領内の基地、シンガポールの燃料貯蔵施設、数機のシュペルピューマ(ヘリコプター)、固定の基地を持たない海洋巡視船(OPV)2艘のみという。

また、英国と中国の海空戦闘能力についても分析。中国人民解放軍は、空海軍の軍備の数で英国軍を圧倒しており、戦闘機と地上攻撃機の数の差が最も大きい。中国軍は戦闘機を2,566機、地上攻撃機を1,182機以上保有しているのに対し、イギリス空軍は戦闘機201機、地上攻撃機153機しか保有していない。報告書は、中国の空海軍はインド太平洋地域で最大の航空戦力を形成しており、空対空ミサイルの軍事能力は英国を上回っていると指摘した。

© Photo Credit: UK House of Commons Defence Committee

図表:中国人民解放軍とイギリス軍の軍事力の比較

英国政府は、中国が画期的な「総合的な挑戦」をしていると見ている一方、国防委員会は、軍事的・地域的な観点から見て、中国が地域的・世界的覇権を欲し、侵略的な動きを強めていることは「戦略的脅威」であると認識している。

 報告書はまた、英国政府のインド太平洋戦略が明確さを欠いていることを指摘し、台頭する中国の脅威に対処するため、省庁を横断する単一のインド太平洋戦略を策定するよう求めている。国防省はより包括的な防衛・外交計画を持つべきであり、米仏を含む友好国やインド太平洋地域の同盟国と協力し、例えば米英豪の安全保障の枠組み「AUKUS」の例に倣うなどして、中国の台湾に対する侵略行為に対し最善の備えをすべきである。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい