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2023-11-07 政治・国際

豪首相が7年ぶり訪中で悪化した関係改善へ 中国、TPP入りに豪州の支援求める狙いか

© 人民大会堂で中国の習近平国家主席と会談したアルバニージー豪首相=2023年11月6日、北京

注目ポイント

首相として7年ぶりに中国を訪問したオーストラリアのアルバニージー氏は6日、習近平国家主席と会談。両国首脳は冷え切った2国間の関係の改善に意欲を示した。オーストラリアは「中国との強力な関係が利益につながる」とする一方、中国には環太平洋連携協定(TPP)加盟交渉入りをオーストラリアに認めさせたい思惑があるとみられる。

今月中旬に米中首脳会談を控える習近平国家主席は、会談で日米豪印の協力枠組み「クワッド」や米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を念頭に、「排他的なグループ形成はアジア太平洋を混乱させる」とし、オーストラリアが加わる米主導の対中包囲網をけん制した。

習氏はまた、「健全で安定した関係は両国の利益になる」と強調。アルバニージー氏は中国との「強力な関係」が利益につながると応じ、習氏を自国に招待した。

そんななか、中国国営中央テレビなどは、中国が環太平洋連携協定(TPP)への参加を希望していると改めて報道。今回の両国の首脳会談をきっかけに、中国はTPP加盟交渉入りをオーストラリアに認めさせたい思惑があるという。

中国は2021年9月にTPPへの加入を申請した。シンガポール経営大学の法学教授ヘンリー・ガオ氏はロイター通信に、「難度の高い要件を満たしてでも中国を加盟に駆り立てているのは、米国のTPP離脱だ」と解説。「中国を封じ込める手段としてTPPを利用しようとする米国の企みを打ち砕くこと」が「隠れた動機」だと指摘した。

TPPは日本やシンガポールを含め、11か国が加盟。中国はオーストラリアとの関係改善を機に、TPPの加盟交渉入りに豪政府の力を利用しようとしているというのだ。ただ、これまで中国の加盟に慎重な立場を取ってきたオーストラリアが、容認に転じるかどうか関心を集めている。

その豪中関係が悪化したのは2017年頃からだった。オーストラリアでは、中国によるファーウェイ技術の〝押し売り〟や中国に対する経済安全保障への懸念が高まり、それに加え、20年に始まった新型コロナウイルスによるパンデミックの起源に関する調査を豪政府が求めたことで、両国の亀裂は決定的になり、かつてないほどに冷え切った。

米紙ニューヨーク・タイムズは先週、「中国とオーストラリアはなぜ和解するのか」とする解説記事を掲載。アルバニージー氏の今回の訪問は、不信感への長い道のりを経て、経済的、外交的安定へ向かう小さな一歩を踏み出したことを意味すると指摘。その上で、「中国の強制関税は消えつつある。オーストラリアの発言は軟化した。だが、不安と安全保障上の懸念は依然として続いている」と要約した。

オーストラリアにとって〝嫌中〟からの転換は、新政権発足とともに始まった。アルバニージー氏は2022年5月、首相に選出され、わずか数週間で豪中の国防相による会談を実現させた。間もなく、シャオ・チェン駐豪中国大使は、関係改善に向けての演説で、「中国はオーストラリアを友人、パートナーとして見ている」とし、「オーストラリアが中国を敵や敵対者として見るべき理由は我々には見当たらないし、私にも見当たらない」と述べた。

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