注目ポイント
数々の金鐘賞を受賞した台湾ドラマ『時をかける愛』が昨年末に同タイトルで映画公開された。出演した男優・女優たちは行く先々でセンセーションを巻き起こした。この『時をかける愛』ブームにより、ロケ地では聖地巡礼する観光客が跡を絶たない。
文・陳群芳 写真・林格立 翻訳・齋藤 齊

『時をかける愛』の第一幕は、ウー・バイ(伍佰)の「ラストダンス」が流れだして幕を開ける。ウー・バイの飾り気のない魅力的な歌声と台湾訛りの強い発音が、この映画に込められた台湾のイメージを彷彿させる。
台湾の真の姿
『時をかける愛』は、失恋したヒロインの黄雨萱がタイムスリップして、顔は同じだが性格はまったく違う陳韻如となり、恋人と瓜二つの男と出会う恋と友情の青春物語に伏線として犯人探しを絡めたサスペンス心理ドラマでもある。タイムスリップというプロットは珍しくない。しかし、失恋した喪失感を癒すという原作のストーリーに、時間と空間、登場人物の入れ替わりが加わったサスペンスドラマという要素が加わったことで、緊張感がぐっと増した。
製作チームが構想段階で、台湾の文化的特徴を意識的に作品に取り込んだことで、ドラマは魅力を増した。例えば、劇中の重要な楽曲には、ヒット曲ではないが人気のあるB面曲が意図的に選ばれている。特にウー・バイの歌声は認知度が高い。脚本家の簡奇峰は、「『時をかける愛』を書くにあたっては、視聴者がすぐに台湾らしさを感じ取れる作品を作りたかった」と言う。
ドラマの主な舞台を台南に絞ったのも同じ発想だ。簡奇峰によれば、台南は他の都市に比べて台湾独特の風土があり、さまざまな特徴を持つ古い家屋が古都の路地裏文化を作り出しているという。例えば、「32レコード社」や陳韻如の家は、すべて路地裏でロケされていて、寺廟も台湾らしさを醸し出している。

台南の時空に飛び込んで
食と歴史の研究を専門とする台南市政府文化局局長の謝仕淵は、台南の路地裏文化について、「台南は清の時代から台湾府城と行政機関所在地の街並みを受け継ぎ、各時代のコミュニティの風合いを残しています。台南の路地に入ると、道がまっすぐでなかったり、幅が狭かったり、規格化された複層住宅が大量に建っているわけではないのです。それぞれの路地の空間状況に合わせて住宅が建てられています。」と説明してくれた。赤レンガや化粧レンガなどのように、さまざまな時代の美意識が受け継がれており、街角に清朝時代、日本統治時代、さらには民国時代初期の建物が混在していることもある。謝仕淵の目には、路地裏文化からうかがいとれるのは、窓の飾り鉄格子の文様の選び方から玄関の植栽など、台南の人々が自分たちの住まいを形作る姿勢であり、それはすべて人々のライフスタイルへのこだわりと自分らしさの発露なのだ。