注目ポイント
イスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスの軍事衝突を巡って、インドネシアとマレーシアではパレスチナ支援を訴える大規模なデモが起き、ASEAN 諸国における立場の違いが浮き彫りになった。ASEANの一部の国はイスラエルに対して友好的な姿勢をとっているが、イスラム教徒の多いインドネシアとマレーシアはパレスチナを強く支持している。国際問題における加盟国の立場の違いは、ASEAN の結束と影響力に脆弱性が潜んでいることを示している。
グローバル・ボイス(市民ジャーナリストによる国際的ネットワーク)によると、10月14、15日の両日、インドネシアとマレーシアで、パレスチナ支持とイスラエルへの抗議集会が行われた。インドネシアでは首都ジャカルタ、ジャワ島の都市スラカルタ等の都市で数千人規模の集会が行われ「パレスチナ解放」を叫び、パレスチナ国旗を振った。マレーシアの首都クアラルンプールでも、国立モスクに1万5000人が集まり、同様の集会を行った。この集会はマレーシアの政界から支援を受け、ムヒディン・ヤシン元首相を含む複数の政治家も抗議活動に参加した。
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領も、イスラエルによるガザ攻撃を公に非難した。「インドネシアは、これ以上の犠牲者や損害を避けるため、戦争と暴力を即時停止するよう求める。紛争が激化すれば、より大きな人道的影響をもたらす。この紛争の根本的な原因はイスラエルによるパレスチナの土地の占領であり、国連が定めた協定に従って直ちに解決されなければならない」
さらに、数百人の支持者がジャカルタの米国大使館前に集まり、バイデン米大統領がイスラエルによるガザ爆撃中にもイスラエルを支持したことについて、バイデン大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「真性のテロリスト」だと非難した。
タイのバンコク・ポスト紙はマレーシアの国営ベルナマ通信の報道を引用し、マレーシアのアンワル・イブラヒム首相が「マレーシアはパレスチナ人民の支援に尽力する」と述べたと伝えた。

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イスラエル・パレスチナ紛争におけるASEAN諸国の立場の違いが明確に
バンコク・ポスト紙によると、ASEAN加盟国の中でシンガポール、フィリピン、タイはイスラエルとの関係が比較的強い、イスラム教徒が国民の多数を占めるインドネシア、マレーシア、ブルネイはイスラエルを国家として正式に承認しておらず、国交も結んでいない。
シンガポールの多国籍ニュースチャンネル「チャンネル・ニュース・アジア」の報道によると、シンガポール外務省は「ハマスは意図的に民間人を標的にして攻撃し、殺害・誘拐・拘束など凶悪なテロ行為を行っている。これらの残虐行為には正当な理由が全くない。我々はハマスが人質にしているすべての民間人の即時かつ安全な解放を求める」と述べ、更に「イスラエルには自国民と領土を守る正当な権利がある。しかし、この権利を行使するならば、イスラエルは戦争法を含む国際法を遵守した上で、民間人の安全を守るために全力を尽くさなければならない」と補足した。インドネシアとマレーシアの首脳の声明と比較すれば立場の違いが明確である。