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2023-10-31 政治・国際

「中国は台湾への攻撃準備できていない」と米専門家 ロシアの失敗で習氏が躊躇か

© REUTERS  BRICS首脳会議に出席した中国の習近平国家主席=2023年8月23日

注目ポイント

米紙ニューヨーク・タイムズは今週、中国の習近平指導部が「台湾への攻撃準備はできていない」とするアジアや中国の外交・安全保障の専門家の寄稿を掲載した。その中で、ロシアのウクライナ侵攻の失敗が習氏の台湾への武力統一を躊躇(ちゅうちょ)させ、中国人民解放軍内で起きている腐敗が影を落としていると分析した。

米ジャーマン・マーシャル財団アジアプログラム部長で、中国の外交・安全保障政策専門家ボニー・グレーザー氏はニューヨーク・タイムズ紙に寄せた論文で、習近平国家主席は、台湾統一という〝中国の夢〟の実現を繰り返し主張してきたと説明。

「軍に対し、必要に応じて台湾を武力制圧する準備を2027年までに整えるよう指示し、中国は巨大な軍事力で台湾を脅し、中国支配に屈服させようとしている。台湾東方海域では先月、空母を含む大規模な海軍演習を実施し、数日後には、1日としては記録となる103機の戦闘機が台湾周辺で威嚇飛行した」と指摘した。

だが、ほとんど戦闘実績のない中国人民解放軍が許容可能なコストで台湾を占領、支配できるかどうかは中国指導部内の重大な疑念で、その疑念はロシアのウクライナ侵攻の失敗により、さらに増幅された可能性が非常に高いという。

この観点から、グレーザー氏は、台湾侵攻は回避できないものではなく、今後数年のうちに起きる可能性も低く、米国や台湾にとっては、軍事力を増強して中国の野望を回避する時間が与えられることになると解説した。

「中国指導部で起きた、李尚福国防相や、核・ミサイル兵器を監督するトップ2人を含む軍部の最高レベルの高官らへの最近の粛清は、習氏が軍の戦闘能力に対する確信を持っていないことを物語っている。これらの閣僚解任の理由は公表されていないが、汚職の可能性とそれが軍備に与える影響を示す兆候が見られる」とした。

その上で、「もしそうだとすれば、私腹を肥やしている将校らは、27年までに台湾を掌握する準備をせよという習氏の指示を十分真剣に受け止めていない可能性すらある」と続けた。

ウクライナ侵攻におけるロシアの失敗は、習氏にとって警告となっているという。「侵攻の初期段階で、百戦錬磨のロシア軍は、陸地の国境を越えてキーウを占領するという比較的単純な任務に失敗した。人民解放軍にとって台湾海峡を越えることはさらに困難になるだろう。大規模な水陸両用侵攻は最も困難な軍事作戦の一つであり、制空と海上の優位性と、長期にわたる戦闘で侵攻軍を維持する能力が必要とされるからだ」と解説した。

習氏にとって、迅速かつ低コストで侵略を成功させること以外、政治的リスクは大きすぎる。侵攻を始めた後に膠着状態が長引けば、「中国は強力である」という習氏の主張が揺らぎ、台湾統一の目標が危うくなりかねない。さらなる懸念は、米軍の介入と共に、充実した装備と屈強な台湾軍によって敗北する可能性だ。これは習政権が弱体化し、ひいては共産党支配を脅かす悪夢のシナリオとなる。

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