開票日カウントダウン

選挙ページへ

2023-10-30 政治・国際

159人死亡の韓国・梨泰院事故から1年 政府の安全管理体制が再び問われる

© 梨泰院雑踏事故の1周年追悼式で、涙を流した追悼者ら=2023年10月29日、ソウル

注目ポイント

ハロウィーンを前に集まった若者ら159人が死亡した雑踏事故から29日で1年を迎えた韓国・ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)では先週末、犠牲者を悼み、悲しみに包まれた。一方、行政や警察は人工知能(AI)を使って人ごみを予測する監視システムを導入するなど、再発防止のため厳重な警戒態勢を敷いたが、「その場しのぎの措置しか取られていない」との批判も出ている。

今年の韓国・ソウルでは多くのレストランやバー、デパート、遊園地などがハロウィーンをテーマにしたイベントを中止。1年前、狭い傾斜路地に大勢の人が押し寄せ、押しつぶされ、159人が亡くなった梨泰院では28日、ハロウィーンのコスプレ衣装を着た人もほとんど見られなかった。

「私たちはあなたを永遠に忘れません」「ごめんなさい」「安らかに」などと犠牲者を悼むメッセージが書かれた紙が、梨泰院の路地の壁に貼られていた。ソウル中心部に設置された追悼所には多くの人々が訪れ、犠牲者の写真の前に、白い花を手向けたり焼香をした。

AP通信の取材に、梨泰院を訪れた会社員チェ・スルギさん(30)は「このような事件は二度とあってはならない。心が痛みます」と語った。

ソウルにある別の歓楽街・弘大(ホンデ)地区でも、ハロウィーンコスチュームの人はまばら。警察によると、29日早朝までに韓国全土でハロウィーンに関連する事故の報告はなかった。

当局は先週末、梨泰院地区に加え、ソウルにある15の主要歓楽街の群衆規制と歩行者の安全のため、数千人の警察官や救急隊員などを配備。ソウル警察によると、安全対策のほか、麻薬使用や暴力犯罪を監視するため、約200人の警察官が個別に出動した。

警察の特別捜査本部は今年1月、梨泰院事故を「人災」と結論付け、捜査を終了。事故当日に梨泰院の人ごみを正確に予測していたにもかかわらず、警察や行政が十分な安全対策を取らなかったことが判明。また、梨泰院での人出が急増したため、大惨事が起きることを危惧した通報者からの警告があったにもかかわらず、対応が不適切だったことも認めた。

梨泰院事故では死者のほとんどが20~30代の若者だったため、悲しみはさらに深まった。2014年に304人(修学旅行中の10代の学生など)が死亡したセウォル号沈没事故から教訓を学んだにもかかわらず、政府が安全と管理の問題を再び無視したことにも市民の怒りが噴出した。

ソウルのオ・セフン市長は27日、「災害に対する悲しみと重責を胸に、改めて深くおわびする」との声明を発表。「災害の痛みと悲しみを乗り越える方法は、このような事件を二度と起こさないこと」と誓った。

梨泰院の悲劇以来、当局は国の安全システムと対応手順の徹底的な見直しを試みてきた。警察は、警察官が車上から人の流れを誘導する日本式の「DJポリス」を導入。ソウル市は監視カメラで繁華街の人の密集度を分析し、警告を出す人工知能(AI)を使ったシステムの活用を開始した。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい