注目ポイント
台湾の元副総統、呂秀蓮氏(79)がこのほど密かに電撃訪日を敢行。都内のホテル一室でTNLJP編集部の単独インタビューに応じた。来日目的は呂氏自身が提唱する台湾、日本、韓国による「民主アジア連盟」を民間主体で構築するための、日本社会への働きかけ。ロシアのウクライナ侵攻に続き、ハマス・イスラエルの衝突と、世界に2つの戦火があがるなか、「台湾海峡を次の火薬庫にしない」「台湾、日本、韓国が民主主義を軸に団結し、ウイン・ウインの関係をもとに平和を守る」などと理念を語った。
中国が強権的姿勢を強め、台湾海峡の平和と安定が国際社会で注目される中、台湾で2000年から2008年まで、民主進歩党・陳水扁政権で副総統を務めた呂秀蓮氏が10月23日から25日まで、2泊3日で訪日した。TNLJP編集部は呂氏の離日直前の25日夕、東京都千代田区内のホテル一室で単独インタビューを行った。主なやり取りは以下の通り。

今回の訪日の期間と目的は
「日本の有力民間団体や、意識の高い国会議員らと会談し、台湾、日本、韓国の連携、団結の重要性を説いて、具体的なムーブメントをおこしてゆくのが目的。10月23日からきょう(25日)までの2泊3日の短い滞在だったが、臨時国会の会期中にもかかわらず日本の与野党の国会議員をはじめ、民間交流団体幹部らにも丁寧に説明し、有意義な話ができた。今後も引き続き訪日の機会を設けていくつもりだ」
具体的にどのような提唱を行ったのか
「ご存知の通り、昨年のロシアのウクライナ侵攻のみならず、いま新たにハマス・イスラエルが衝突し、中東にも戦火があがるなど世界の情勢は不安定だ。しかし台湾海峡を次の火薬庫にしてはいけない。私たちはみな平和を望んでいる。台湾、日本、韓国が民主主義という共通の価値観に立脚して連携、団結する『民主アジア連盟』を結成し、ウイン・ウインの関係を民間主体で構築し、平和と安定の利益を享受する構想を提案した」
「台日韓には民主主義に加え、儒教文化という下敷きも共通する。またハイテクの発展という今日的な課題も共通だ。もし民間交流の力で『民主アジア連盟』が結成できれば、これが主軸として、米国、カナダ、さらにはニュージーランドとオーストラリアにも連携を呼びかけ、『太平洋民主連盟』の結成にまで輪を広げるつもりだ」
日台韓には負の歴史的因縁もある、連携には困難も想定される
「歴史を忘れないことは大切。ただし一方的にならず、いたわり合う姿勢も必要だ。たとえば私は台湾の苦難の歴史とともに、その前向きな発展の物語をもっと多くの人に知ってもらいたい。共産主義国であるロシアと中国は団結できるが、民主主義陣営が団結できないということでは残念だ。実際、台湾、日本、韓国の関係は唇歯輔車の関係と言ってよい。『唇滅びて歯寒し』という間柄なら、うまく支え合って目前に迫る覇権を、ソフトパワーで上手にくるみ、いなすこともできる」

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提唱に関連する具体的な活動実績は
「実は今年7月31日、『東アジア地政学の総括と展望』というテーマで、私は日清戦争(1894~95)開戦129年の『台韓フォーラム』を提唱し、多くの台湾人を韓国に連れて行き、会場となったソウルの国会議事堂で韓国のみなさんとともに、東アジアの近代史を冷静に直視し、語り合った。日清戦争では日本の清朝への宣戦布告が8月1日だったので、それに合わせた開催だ。フォーラムに合わせ、韓国の黄教安元国務総理(首相)によるレセプションも開かれた」