注目ポイント
TSMCは、最先端の3nm技術による半導体生産が立ち上がっているものの、消費者向け製品の需要が低迷し、その影響を受けている。第3四半期は大幅減益となったものの、事前予想を上回った。PCやスマートフォンには需要が安定化する兆しもあり、2025年には2nm技術での生産を開始する見通し。
TSMC(台湾積体電路製造)は10月19日、2023年第3四半期(7〜9月期)の利益が2110億台湾ドル(約9700億円)となり、2019年第1四半期(1〜3月期)以来の大幅減益となったと発表した。消費者向けエレクトロニクス製品の需要は依然として低迷しているが、売上高、利益ともに事前のアナリスト予想を上回った。
「当社の事業は、業界をリードする3ナノメートル(nm)技術の強力な立ち上がりと5nm技術の高い需要に支えられた。だが顧客の在庫調整が続き、一部が相殺された」(同社決算報告)
第3四半期の売上高は第2四半期から13.7%増加。第2四半期は、スマートフォンやノートPCといった消費者向け製品の需要低迷により、四半期では4年ぶりの減収となった。だがアナリストは、スマートフォンやPCメーカーの半導体在庫は底を尽きつつあり、需要が戻ってくると予想している。
魏哲家CEOは19日の決算説明会で、メーカー在庫の減少が続くとの見通しを示した。
「マクロ経済状況は全体的に弱含みで推移し、中国での需要回復が遅れているため、顧客は在庫管理に慎重な姿勢を崩していない。これにより、第4四半期も在庫の減少は続くと予想している」と魏CEOは語った。
「とはいえ、PCとスマートフォン市場では、需要安定化の初期サインが現れている」
TSMCは半導体受託生産の世界最大手で、アップルやエヌビディアのような企業向けに半導体を製造している。2025年には2nmの半導体の量産を開始する予定だ。

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スマートフォン市場の回復
Jim Cramer's Investing Clubのポイント解説:
Canalysのデータによると、2023年第3四半期の世界のスマートフォン市場はわずか1%マイナスにとどまり、減少の鈍化を示した。第2四半期は前年同期比で11%減少だった。
「地域的な回復と新製品へのアップグレード需要に支えられ、スマートフォン市場は年末の販売シーズンに先立ち、第3四半期に前四半期から2桁%の成長を記録した」とCanalysは17日のレポートで述べた。
AI半導体の需要は、ChatGPTや中国の類似サービスなどの「大規模言語モデル」の普及によって急増している。これがTSMCの株価を押し上げ、株価は年初から19%上昇している。
だが魏CEOは、AI需要は消費者向けエレクトロニクス製品の需要低迷を「相殺するには不十分」と19日の決算説明会で述べた。
「2023年第4四半期に向けて、AI関連の需要は引き続き好調だが、当社ビジネスの全体的な循環性を相殺するには不十分」「第4四半期のビジネスは、当社の3nm技術の継続的かつ強力な立ち上がりによって支えられ、在庫面については、顧客の継続的な在庫調整によって部分的に相殺されると予想している」
TSMCは第4四半期の売上高を188億ドル~196億ドルと予想している。アメリカは中国に対する輸出規制でのTSMCの適用除外を延長、TSMCは中国での半導体生産のためにアメリカ製の最先端半導体製造装置を輸出できることとなった。