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2023-10-19 政治・国際

台湾・総統選まで3カ月 カギ握る2大政党内「派閥抗争」という視点【李世暉の天秤】

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注目ポイント

中国が軍事的圧力を強化するなか、世界が注視する2024年台湾・総統選まであと3カ月。すでに主要3候補プラス1の水面下のせめぎ合いは始まっており、各2大政党内部の派閥間のせめぎ合いも見え隠れする。1996年の初の直接選実施以降の総統選は、それぞれ何がキーポイントで、2024年は一体何が焦点となるのか。台湾の政治大学教授で、シンクタンク・日本研究院理事長の李世暉氏は、次期総統選はまさに「派閥抗争こそがキーポイントになる」と指摘する。

台湾の総統選挙に影響する5つの要素

民主国家の国政選挙は、無論アメリカ、欧州、日本の場合でも常に経済および社会福祉などの争点 (これにつながる外交方針を含め)が選挙の勝敗を決定する。各国の主要政党の候補者は、その選挙の時点における就業、治安、貧困、医療、移民など内政問題における方針などをめぐり、有権者の支持を得るために激しい論争を展開する。

しかし台湾のこれまでの総統選を振り返ってみると、経済および社会福祉が常にその勝敗のカギを握る争点だった、とは言い難いのが実情だ。

ただし、ほとんどの世論調査の結果は、台湾の有権者の最も関心のある争点が「経済発展」であることを示している。例えば台湾の有力ビジネス誌「天下雑誌」の2023年10月の世論調査によると、台湾の民衆の最大の関心事は「経済発展」で2位の「安全保障」、3位の「両岸関係(中台関係)」、4位の「貧富の格差」問題を大きく引き離している。

しかしながら先述の通りこれまでの総統選では常に「経済発展」は論争のキーポイントだったとは言いがたい。そうだとしたら何が台湾の総統選を左右する最大の争点だといえるのだろうか?

筆者はこれまでの台湾の総統選をつぶさに観察し、研究者、専門家、主要政党関係者らとの意見交換を通じ、その要因は以下の5つにまとめることができる。

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民主進歩党(民進党)本部前に集まった蔡英文氏の支持者ら=2020年1月11日

 

Ⅰ候補者本人の個人的カリスマ性(魅力)

台湾の総統選はある意味で全民参加型の「国政選挙」であり、1996年に行われた初の民選制度による総統選以来、ほんとどの投票率は75%前後となっている。

この全住民が参加する型での選挙は、候補者の個人的なカリスマ性が有権者の支持を得られるか否かが、選挙結果に大きな影響を与えるのだ。

 

Ⅱ両岸(中台)関係に関連した統一と独立の意識

台湾海峡を挟んだ両岸関係の今後の展開については、台湾では大まかに「独立」「現状維持」「統一」の三つのスタンスに分別される。しかし各種世論調査でも明らかなように台湾の有権者の大多数は「現状維持」を支持している。

しかし、この「統一」と「独立」の意識は、国家アイデンティティ、軍事的緊張の問題に直接関係していることが多く、そのため台湾の有権者は投票時の内外の情勢にしたがって、「統一」と「独立」の意識の影響を容易に受けるという傾向にある。

 

Ⅲ党内の権力闘争に関わる派閥の存在

また中国国民党(国民党)であれ、民主進歩党(民進党)であれ、政党が総統選に与党として参加すると、激しい党内権力闘争に直面する。

特に与党が有利な状況下では、与党内の派閥間の抗争が激化するのが自然な流れだ。例えば2000年の総統選では、国民党内の派閥間対立が非常に激しかった。それゆえに国民党の分裂につながり、その年の総統選の過程と結果に決定的な影響を与え、民進党の陳水扁氏が勝利し、初の政権交代を実現させるに至ったのだ。

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