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2023-10-16 政治・国際

イスラエル攻撃でハマス批判を避けた中国 ウラには米国に代わり覇権狙う長期的戦略

© REUTERS イスラエル軍とイスラム過激派ハマスの戦闘が続く中=2023年10月16日、ガザ地区

注目ポイント

イスラエル軍は14日、イスラム組織ハマスに対して陸海空から大規模な攻撃計画を準備していると発表。紛争拡大が深刻化するなか、米国のブリンケン国務長官は同日、中国政府に中東における影響力を行使するよう要請した。その中国は、今回の中東情勢が、米国に取って代わる世界のリーダーとして、「途上国に対して新たなビジョンを示す絶好の機会ととらえている」と米政治専門サイトは分析した。

ブリンケン米国務長官は14日、中国の王毅外相と電話で会談し、中国政府に中東での影響力行使を申し入れる一方、王毅氏はイスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスの衝突をめぐり、「(国際社会の)合意を促進するため、できるだけ早期に国際会議を開催するよう求める」と提案した。

王氏は軍事的手段による解決はできないと訴え、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」による解決案を実行すべきだと強調。ブリンケン氏は緊張緩和と人道支援で国連の役割に期待を示した。

そんな中国について、米政治専門ニュースサイト「ポリティコ」は先週、「中国のハマスへのぬるい警告は長期戦略の一環」と題する記事を掲載。今回急展開した中東情勢は、中国が米国に取って代わる世界のリーダーとして、新たなビジョンを途上国に示す絶好の機会になっているという。

今月7日にパレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスが、イスラエルに大規模な攻撃をしかけた直後、中国は「自制」と「双方での解決」を求めた。だが、この声明で中国がハマスを非難しなかったことで、「残虐行為を矮小化した」としてイスラエルや米国から直ちに反発を招いた。

同サイトは覇権を目指す中国が長期的な戦略を立てているとみている。それは、中国が中東だけでなく、米国に代わるパートナーを求める国々が増えつつあるアフリカや中南米などの地域で、パレスチナの大義に共感する国々から支持を得ることを狙っているというのだ。

だが、イスラエルを疎外することは中国にとって高い代償を伴うことにもなりかねない。中国はイスラエルとのハイテク分野の貿易で、年間10億ドル(約1500億円)以上の半導体を輸入。同分野の重要なビジネスパートナーでもある。さらに、イスラエルとパレスチナの間の仲介役としての地位を確立しようとする中国のもくろみと相反することにもなる。

元駐シリア米国大使で、現在はワシントンのシンクタンク「中東研究所」のロバート・フォード氏は、「中国はアラブを怒らせることを明らかに恐れている」と指摘。「中国はイスラエルに向かって軽く会釈する際も細心の注意を払っている。イスラエル側はそれを見て、中立な立場の仲裁者ではないと感じている」と解説した。

ポリティコは、「中国政府はおそらく数年先、そして中東のずっと先のことを考えている」と分析。アフリカや中南米などの国々は、パレスチナ人のイスラエルによる占領の苦しみや、イスラエルの〝アパルトヘイト〟政策とされる隔離政策との闘いを、かれらが経験してきた植民地化との戦いに共通点を見出しているという。

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