注目ポイント
ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中で発生したイスラエルとハマスの大規模な軍事衝突で米国は国際的に厳しい立場に追い込まれている。来年11月に大統領選が迫るなか、内政も波乱含みでまさに内憂外患状態。この情勢下での米中関係の悪化を避けたいバイデン政権としては、11月にサンフランシスコで開催されるAPECに合わせて米中首脳会談を開催し、米中関係の相対的な安定を世界にアピールしたいところだ。一方、経済悪化が喧伝される中国も米中関係の当面の安定は必要である。習氏訪米が実現するか。実現すれば会談内容がどのようなものになるのかが、年内の国際政治の最大の山場となる。そしてその先には激動の2024年が待っている。
「内憂外患」「経済悪化」
ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中で、イスラエルとハマスが大規模な軍事衝突を起こし、アメリカは国際的に厳しい立場に追い込まれている。ウクライナとイスラエルを同時に支援することは、容易ではない。しかも、国内では大統領選挙が来年11月5日に迫り、共和党のドナルド・トランプ前大統領をめぐる90件を超える訴訟が進行している。下院でも、ケビン・マッカーシーが議長を更迭され、その後任すら決まる見込みが立っていない(10月15日現在)。まさに内憂外患である。
こうした情勢下では、米中関係をいたずらに悪化させるわけにはいかない。ジョー・バイデン政権としては、11月にサンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に何とかして中国の習近平国家主席を招き、久しぶりの米中首脳会談を開催し、米中関係の相対的な安定を世界にアピールしたいところであろう。中国にとっても、経済の悪化が喧伝される中で、米中関係の当面の安定が必要である。すでに両国は高官レベルでの接触を重ねている。習氏の訪米が実現するか否か、そして、米中首脳会談の内容がどのようなものになるのかが、年内の国際政治の最大の山場となろう。

© Cliff Owen - CNP/Sipa USA via Re
トランプ氏がとりうる3つの手法
さて、米大統領選挙である。トランプ氏が勝てば、アメリカのウクライナ支援は弱まる。ヨーロッパの結束も揺らごう。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、この選挙結果を待ち望んでいよう。トランプ氏が共和党の大統領候補の指名を獲得することは、ほぼ必定である。だが、問題は無党派層の動向である。訴訟が長引き、有罪判決が重なれば、トランプ氏に不利な事態になっていこう。
連邦レベルでの訴訟で有罪が確定しても、大統領になれば、トランプ氏は自らに恩赦を与えることができる。しかし、ジョージア州やニューヨーク州のレベルで有罪が確定すれば、大統領の恩赦は及ばない。それは州知事の権限だからである。そうなると、トランプ陣営がとりうる手法は、次の三つであろう。まず、ひたすら裁判を長期化させ、大統領就任後は国家安全保障を理由に側近たちの証言を拒否する。第二は、州のレベルで有罪が確定しても、その判決が合衆国憲法に違反するという理由で、連邦最高裁判所に持ち込む。第三に、連邦最高裁判所が州の判決に違憲認定しなければ、刑は確定してしまうが、大統領の行政命令によって、やはり国家安全保障上の理由で刑の執行を延期させる。

© USA TODAY NETWORK via Reuters Co
両党ともに課題は世代交代
他方、バイデン大統領にも高齢という問題がある。もし再選されたら、二期目には外遊などは副大統領や国務長官らに任せて、気力と体力をできるだけ温存する消極的な大統領になってしまうかもしれない。共和党も民主党も、世代交代が大きな課題である。